From Kentaro Matsuo

THE RAKE JAPAN 編集長、松尾健太郎が取材した、ベスト・ドレッサーたちの肖像。”お洒落な男”とは何か、を追求しています!

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長谷川雅一さん

長谷川雅一さん

ガジアーノ&ガーリング ディレクター,アジア

text kentaro matsuo  photography shinsuke matsukawa

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私がずっと気になっていたファッショニスタ、長谷川雅一さんのご登場です。初めてお会いしたのは、もう10年ほど前、英国のシューズ・ブランド、ガジアーノ&ガーリングのトニー・ガジアーノ氏とディーン・ガーリング氏に、私がインタビューしたときのことだったと思います。素晴らしい着こなしと、超堪能な英語が印象的でした。

 

「中学高校とインターナショナル・スクールへ通っていました。上智大学卒業後、仕事の関係でニューヨークに渡り、そのまま25年ほど住んでしまいました。トニーとディーンは、以前からの知り合いで、2006年のブランド設立時には、ファイナンス面を担当し、ちょうど今でいうクラウド・ファンディングのようなことをやったのです」

 

長谷川さんのご専門は、いわゆる「投資」というヤツで、私には想像もつかないような巨額のお金を動かされているようでした。

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スーツはペコラ銀座。

「ペコラ銀座には、もう20年以上前から通っています。ずいぶんたくさんの服を作りました。きっかけは、松尾さんが初めて書いた佐藤さんの記事だったんですよ。それまでは既製品やパターンオーダーなど、いろいろ試していましたが、うまく行きませんでした。そんな時にペコラ銀座の記事を見て、『コレだ!』と思い、すぐに作りに行きました」

 

それは、ありがとうございます。自分の記事を読んでくれて、それに影響された方がいると、嬉しさもひとしおです。今でこそ、欧州帰りのテーラーはゴマンといますが、20年前はペコラ銀座の店主、佐藤英明さんしかいなかったんですよね。裃(かみしも)のようなスーツばかりだった当時の日本のテーラー界において、彼の作るイタリア風の丸く柔らかく人間的な服は、衝撃的だったのを覚えています。

 

タイはルビナッチのス・ミズーラ。ナポリにてご購入。

シャツは香港のオーダーメイド、デヴィッズ・シャツ。カルロ・リーバの生地を持ち込みました。

 

トレードマークの丸メガネは、大井町の林眼鏡店。

「店主がジョン・レノンが大好きで、丸いメガネばかり扱っているのです。これは福井県・鯖江製のオリジナル」

 

チーフはニューヨークのバーグドルフ グッドマンにて、ダース買いしたもの。

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 時計はオーデマ ピゲのロイヤル オーク。イエローゴールドのモデルです。

「もう25年以上前に買ったものですが、ずっと着用していませんでした。『ある程度オジサンになったらしよう』と心に決めていたのです。そして、私も40代半ばを過ぎたので、そろそろいいかなと思い、着け始めました」

 

シューズはガジアーノ&ガーリング。ビスポークのベルジャン・ローファーです。色はブラックで、パイピング部分にはパイソンが使ってあります。

「あまりオックスフォードタイプは履きません。カカトの骨を痛めたことがあり、それ以来、足裏にフィットした中敷きを入れたローファーを愛用しています」

 

アクセントとなっているレッドのソックスは、ジョンスメドレー。

「ソックスはレッドしか履きません。そしてネクタイは紺無地しか締めません。靴はブラックのベルジャン・ローファーばかりで、スーツもダブル一本槍。いつも同じ格好をしているように見られますね(笑)」

 

 私の経験だと、いつも同じような格好をしている人ほど、お洒落です。そしてレッドのソックスを愛用している人は、神級のファッショニスタです。日本のブランド・ビジネスの草分けであり、コロネット商会の創業者、桃田有造氏は、いつもレッドのソックスを愛用なさっていました。

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長谷川さんは昨年末に、長年住んだニューヨークを離れ、現在は東京をベースにしています。

「最近のニューヨークはどうも雰囲気が悪いのです。反人種差別デモや反トランプデモが頻繁に起こるようになってしまいました。私には二人の高校生になる息子がいるのですが、街を歩かせるのが不安になって、日本へ帰って来ました」

 

同じ息子を持つ身として、その気持ちはわかります。

ちなみに私の息子はいま7歳ですが、もうすぐ来るであろう反抗期について不安に思っていることを吐露すると、長谷川さんは「ウチにも反抗期はありましたが、すぐに終わりました。今はまたいい子に戻っています。そんなに心配することないですよ」と言ってくれました。

 

現在のメインのお仕事は、イギリスにおけるフィンテック関連だとかで、私には、そのへんはさっぱりわかりませんが、同じ息子を持つ親として、そして同じテーラーを愛用する洋服ファンとして、もっとお話をしていたいと思わせる方でした。

黒川修さん

黒川修さん

 メゾン・ディセット代表取締役

text kentaro matsuo  photography natsuko okada

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ポーツ1961、エミリア・ウィクステッド、トマジーニ、クラウディア・リー、ヴィオネなど、10近いブランドを日本に輸入しているメゾン・ディセットの代表、“クロちゃん”こと、黒川修さんのご登場です。私は黒川さんが、八木通商という輸入商社にお勤めの時に知り合いました。イタリアの駐在員をなされている時は、よくミラノの街を案内してもらったものです。

 

その後、バルマン、アレキサンダー・マックィーンなど、さまざまなブランドの日本責任者を経て、現在はご自身の会社を経営しています。華麗なる経歴をお持ちなのは、やはり語学が得意だからでしょう。

 

「建築家をしていた父の仕事の都合で、小学校に入る直前まで、アメリカに住んでいました。現地の幼稚園へ通っていて、周りにはドイツ人、イスラエル人、エジプト人など、いろいろな国の友達がいました。基本英語でしたが、消防車だけは、私がかたくなに日本語で言っていたので、終いには、幼稚園中の生徒が“ショーボーシャ”という単語を使うようになってしまった(笑)」

 

なるほど、子供が言葉を覚えるプロセスって、面白いですね。英語に関しては、その後仕事で使うようになって、もう一度苦労して学び直したそうです。

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ジャケットはボッテガ・ヴェネタ。

「デザイナーのトーマス・マイヤーが好きなのです。ベーシックのなかに、突然抽象的なツイストがあって面白い」

黒川さんは、トラッドとモードの中間がお好きです。

 

シャツは、ご自分で扱っているポーツ1961。

「このブランドはもともと1961年に、ルーク・タナベという日系カナダ人が始めたものです。彼は『男には、10種類のシャツが必要だ』という哲学を持っており、ナンバー1から10までの番号が振られたシャツをコレクションの中心に据えていました。ごくプレーンなものからスモーキング用まで揃っており、これはそのうちの一枚です。現在でも毎シーズン素材を変えつつ、定番商品として展開しているのです」

なんとも、面白いブランドですねぇ。

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パンツはランバン。

「ランバンのルカ・オッセンドライバーも、好きなデザイナーの一人です。ここのパンツは、とにかく私の体型に合うのです」

 

時計はベダ&カンパニーのナンバー8。10年ほど前に購入したもので、ポイントはクロコダイル製のイントレチャートのベルトです。

「このベルトが気に入って買ったのですが、その後廃番になってしまって。メーカーに聞いたら、もう作っておらず、在庫もないというのです」

おやおや、これはぜひ復活させてもらわないと・・。

 

シューズはオールデン。

「オールデンは6足くらい持っています。トラッドからモードまで、こんなに何にでも似合う靴は、他にありません。あとはジャンヴィト ロッシやマノロ ブラニクも好きですね」

黒川さんは、かつてマックスヴェッレの代理店もしていたことがあるので、靴には一家言おありです。

 

今日はブラックとネイビーの組み合わせ。

「ネイビーが死ぬほど好きなのです。いつもこんな格好ばかりしています」

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さて今ではファッションの世界で活躍されている黒川さんですが、大学入学時は、ファッションか音楽かで、ずいぶんと迷ったことがあったとか。

「子供の頃から、ずっとピアノをやっていたのです。高校の三年間は、先生について、ジャズ・ピアノを勉強していました。ボストンの学校へ入って、プロを目指そうかどうか、真剣に悩みました」

 

そう言いつつ、BGMとしてかけてくれたのは、チック・コリアの“オン・グリーン・ドルフィン・ストリート”。

 

「これは一番好きな曲のひとつです。今は家にピアノがないので、専ら西麻布のカラオケ・バーに行ったときに、弾くくらいになってしまいましたが・・」

 

黒川さんが、そんなにピアノが上手だとは、初めて知りました。ここぞというとき、モテるでしょうねぇ。一度彼の演奏を聞いてみたいです。

 

「私がジャズ・ピアノを好きになったのは、母方の祖父の影響です。とても粋な人で、家に行くといつもジャズやラテンの曲がかかっていたのです。スーツはいつも銀座・壱番館で仕立てていましたね。80歳を過ぎても、プラダを着ているような人でした」

 

撮影した南青山の事務所は、先日オープンしたばかり。これからも独自の視点で選んだいいものを届けていきたいと、決意を新たにされています。

「オンスケジュールでショーを行うブランドにフォーカスしています。ファッションへの憧れをストレートに伝えたいという思いがあるので、ランウェイ・ブランドが好きなのだと思います」

 

おじいさま譲りのアーティスティックなセンスと、とびきりの笑顔が、この方の魅力といえましょう。