From Kentaro Matsuo

THE RAKE JAPAN 編集長、松尾健太郎が取材した、ベスト・ドレッサーたちの肖像。”お洒落な男”とは何か、を追求しています!

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藤原寛一さん

藤原寛一さん

 ギャレット専務取締役

text kentaro matsuo  photography tatsuya ozawa

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 ギャレット専務の藤原寛一さんのご登場です。ギャレットというのは、ソックスをはじめとして、キャップ、バッグ等、さまざまなファッション・アイテムを扱う総合アパレルです。グループ全体で400人もの従業員を抱えています。自社製品の研究室まで擁しているから驚きです。しかし、25年前に藤原さんが入社した時は、大分様子が違っていたようです。

 

「私が入った大阪支社には、社員が3人しかいませんでした。会社全体でも、15人くらいだったと思います。扱っていたのはソックスだけでした」

 

当時、会社は大変苦しい状況で、起死回生をはかって東京と大阪に支社を出したばかりだったのです。藤原さんは、そこへ就職してしまったというわけです。

 

「ある日社長に言われました。『お前、今からラスベガスのMAGIC(世界最大級のファッション展示会)へ行って来い。そして何でもいいから買ってこい』と。で、いきなり100万円を渡されたのです。『この100万を101万円にしろ』とも言われました。そこで私はその100万円で、帽子を買って帰ってきました。それが当たったのです。そこからさまざまなビジネスが広がっていきました」

 

 25年間で会社は20倍以上に成長したのですから、まさに倍々ゲームですね。その着こなしも、成功したビジネスマンに相応しいものです。

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 スーツはサルトリア セミナーラ。フィレンツェの名店でスミズーラしたものです。

「始めはリヴェラーノで作ろうと思っていたのですが、知り合いに薦められてセミナーラにしました。この色が気に入って」と藤原さんが言うと、すかさず横のスタッフから「いつも同じ色ばかり買われますよね」とのツッコミが。でもお洒落な人ほど、そうなんですよね。

 

シャツはバルバの“ブルーノ”というモデル。

タイは加賀健二さん率いるセブン フォールドです

「先日フィレンツェ店がオープンした時に買いました」

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 時計は、オーデマ ピゲのロイヤル オーク。私とお揃いです。ファッション界には、本当にロイヤル オークをしている方が多いですね。

 

シューズはエドワード・グリーン。1年のうち9割は茶色、そして8割は、スエードの靴を履くそうです。イタリア流の洒落たドレスダウン術です。

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そしてソックスはギャレットオリジナルのgark.(ガーク)というブランド。

「この商品は特許を持っています。履き口のところがナイロン製になっていて、締め付けがキツすぎません。立体的にカカトをホールドする形になっていて、シリコンストッパーが付いていないのに脱げにくいのです」

 

 実は私も一足プレゼントしてもらったので、いま同じソックスを履いてこの原稿を書いているのですが、なるほど快適です。シューズインソックスでお悩みの貴兄はお試しあれ。

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 見事なアズーロ・エ・マローネのコーディネイトですね。お顔までマローネ色によく焼けているので、理由を聞くと、一昨日までカプリ島でバカンスだったそう。

「1年に1度、家族とカプリへ行くのです。プンタ・トラガーラというホテルがあって、そこのプールで一日中ぼーっとしている。とにかく景色が素晴らしいし、来ている人たちもエレガントで、気に入っています」

カプリで休暇とは羨ましい限りです。

 

しかし普段の藤原さんは本当に仕事一筋。仕事のことを伺うと話は止まりませんが、「では、プライベートは?」と聞くと、「う〜ん」と黙り込んでしまいます。

「とにかく今、仕事が楽しくて仕方がない。25年間一生懸命やってきたので、60歳までの数年間は、自分の本当にやりたいことをやっていきたい」

 

それは実用衣料を超えた、本物の高級ファッションだとか(先日ご紹介したACATEもその一環です)。どうやら第2弾、第3弾もあるようで、しばらくは藤原さんから目が離せません。

沖哲也さん

沖哲也さん

 ACATEブランドディレクター、FER BLEU代表取締役

 text kentaro matsuo  photography tatsuya ozawa

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新ブランドACATEディレクターの沖哲也さんです。沖さんは、もともとセレクトショップ、バセットウォーカーのPRをなさっていたので、ご存知の方も多いと思います。今回初めて知ったのですが、沖さんのご出身は、東京・墨田区押上だとか。

「スカイツリーのたもとで生まれました。もう、ものすごい下町です。家の周りには、メリヤス問屋がたくさんありました。私の母親はお洒落が好きな人で、私が小学校の頃は、よくイッセイ ミヤケなんかを着ていましたね。その影響で私もファッションが好きになりました」

 

その後、文化服装学院に入学し、オートクチュールを学びます。

「ところが当時の下町では、家業を継がず“文服”なんて、と思われていた。しかもその頃はDCブーム全盛で、私も金髪でスカートを履いていました。もう押上では、塩をかけられる存在でした(笑)」

 

バセットウォーカーに入社されてからは、まず販売を担当されました。

「入社当時は、いくら接客しても、まったく服が売れませんでした。“お客様の財布と自分の財布は違う”という当たり前のことに気付いてから、少しずつ売ることが出来るようになりました」

 

それからPRも掛け持ちするようになりましたが、予算はゼロだったそうです。

「いろいろと考えたあげく、私は編集者やスタイリストの『三河屋さんになろう』と思いました。つまり、彼らの御用聞きということです。自ら企画やウケそうなネタを作って、彼らのところへ持っていきました。私自身の自宅に雑誌編集者を呼んで、編集会議をやったこともあります」

 

こうして生まれた大ヒットが、シューズ・イン・ソックスです。

「当時は夏になると、誰もが裸足でシューズを履いていました。でも、すぐ臭くなるし、衛生上よくなかった。そこで、ローファーの内側に履けて、外からは見えないソックスのアイデアを思いつきました。ですが、そのアイデアをメーカーに持っていっても、相手にしてもらえなかった。そんな時にイタリアのマレルバ社に、冷え防止のためのインナーソックス(靴下の下に履くソックス)があることを発見しました。これがローファー用としてぴったりだったのです。靴を履くと外から見えなくて、まるで素足のようでした。『これだ!』と思って、ぜんぶ買い占めました。すると懇意にしていたスタイリストの浅野康一さんが気に入ってくれて、雑誌メンズ・イーエックスの巻頭で紹介してくれた。そうしたら、もうバカ売れで、ついには“お一人様一足しか売れません”と貼り出す始末となりました」

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 スーツはオラッツィオ。

「マットなベージュなのに、ウール素材というところが気に入って」

 

シャツはバルバ。

「最近はバルバの“ブルーノ”というモデルが気に入っています。襟の形がいいし、エッジぎりぎりにステッチが入っているところが好きなんです」

 

タイはマリネッラ。

「ちょうどいい茶色。フレスコタッチが気に入って」

 

チーフはエルメス。

「シルクチーフはエルメスのみ。レギュラー品も購入しますが、パリの蚤の市クリニャンクールなどでも買い集めています」

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時計はチュードル。ちょっと小さめのMINI SUBですね。

「この時計は14歳のころから愛用しています。昔、香港で祖父に買ってもらったものです。第二次大戦中に中国へ出征していた祖父は、かの地をもう一度訪れたいという希望があり、なぜか私を伴って二人で中国旅行へ出かけたのです。祖父は大正モダンを感じさせる粋な人でした。それ以降も時計はいろいろと買いましたが、結局これだけが残りました」

 

シューズはクロケット&ジョーンズ。

「みんなタッセル履いているから、嫌だなーと思いつつ・・(笑)」

 はい、当日の私もクロケットのタッセルを履いていました。

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 そしてクラッチバッグはACATEです。

「日本のみならず、世界で売っていけるカバンを作りたい、とクライアントであるGRADYsrlの赤石社長より依頼がありスタートしたブランドです。工場探しから始めて、何回もサンプルを作って、ようやく満足のいく形となりました。あえてバッグデザイナーは使いませんでした。なぜならデザイナーが作ると、どうしてもバッグ自体が主張してしまうからです。われわれがやりたかったのは、コーディネイトの中に自然と取り入れられる目立たないバッグでした。ファースト・コレクションは4型8色のみ。しかも売れ筋(35〜40cmのブリーフケース)はあえてやりませんでした。その方がかえってコンセプトが伝わると思ったからです」

 

6月のピッティにも出展され、国内外30社以上の受注を得ました。

「今までのレザーブランドにはないものを作ろうと思っています。セカンド・コレクションでは、“ロングホーズ・ケース”を作ろうと思っています。旅行中などに長靴下を収納するためのものです。でも、そんなもの誰も見たことがないから、どういう構造にしようかと、いま思案中なのです(笑)」

 

この自由な発想から生み出されるACATEに、ぜひ注目して下さい!

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ACATEのバッグ、左:H35×W50×D18cm 右:H35×W48×D14cm

Acate

http://acate-borsa.it/