From Kentaro Matsuo

THE RAKE JAPAN 編集長、松尾健太郎が取材した、ベスト・ドレッサーたちの肖像。”お洒落な男”とは何か、を追求しています!

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山神正則さん

山神正則さん

 シャツ職人

text kentaro matsuo  photography natsuko okada

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ストラスブルゴが擁する、ハウス テイラーズ ラボにて腕をふるうシャツ職人、山神正則さんのご登場です。いつお会いしても、ビシッとしたスーツ姿でキメている、素晴らしいファッショニスタです。

「私は一年中ほとんど毎日スリーピースを着ています。たまの休日、家で過ごす日も、タイを締めて朝食を食べています。これは祖父の影響です。彼はどこへ行くにも身だしなみを整えており、それがとてもカッコよく見えました」

 

スリーピースは、ストラスブルゴのオリジナルパターンオーダー。生地はコットンソラーロです。

「コットンや麻は、よく着る素材です。最初は硬かったのですが、着込んでいくうちに、ほどよい柔らかさになってきました。こういうものは、丸めて壁にぶつけたり、クシャクシャにして放っておいたりしたほうがいいのです」

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シャツはもちろん、山神シャツ。生地はイタリアのボンファンティです。

「カルロリーバから独立した人が興したメーカーです。その生地は、古い織機を使ってゆっくりと織られていて、フワッと柔らかい。こことスイスのアルモが、ウチの素材の軸となっています」

薄いベージュの生成りカラーも、山神シャツの代名詞となりつつあります。

 

タイは10年ほど前のピエール・カルダン。

「昔のデザイナーズのタイを探して、着用しています。サンローランが多いですね。芯材がペラっとしていて、生地もしんなりしており、好みに合うのです」

注目してほしいのは、ノットです。

「タイを結ぶ時、普通は大剣を小剣に巻つけますよね。しかし私の場合は逆で、小剣を大剣に巻きつけるのです。当然巻き終わりは小剣が上に来てしまうので、最後に上下逆にヒネリます」

結び目が小さな独特のノットは、通称“山神ノット”と呼ばれています。もしその名前が定着したら、ウィンザー公以来でしょう。

 

チーフはムンガイ。

メガネは金子眼鏡店

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時計はセイコーのクォーツ。

「これは祖父からもらったものです。時計はいつもカフの上からして、カフスボタンでずり落ちないように留めています。こうすれば汗をかいても、時計やストラップが痛みません」

 

9金とホワイトゴールドのブレスは、HUM(ハム)。日本のブランドです。

「クロムハーツとティファニーのちょうど真ん中、の感じでしょうか」

 

コンビのシューズはエドワード・グリーンのマルヴァーンです。

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「今日のコーディネイトのテーマは“お花見”です。桜の幹を意識した色合わせ。私は花見が大好きなんです。ただ酒が飲みたいだけですけれど(笑)」

実はこの撮影は、東京の開花宣言の翌々日に行われました。

 

日本には、世界的に名の通ったテーラーや靴工房がたくさんありますが、カミチェリアは、まだまだ数が少ないのが実情です。もともとデザイナーであった山神さんにとって、シャツ職人への転身は冒険でした。

「私がシャツ職人になると宣言したら、まわりからは止められました。なぜなら、日本ではシャツは消耗品とされていて、お金をかける人などいないと思われていたからです」

 

しかしシャツ作りへの思いは断ちがたく、33歳にて山神シャツを立ち上げます。

「多くの方に、喜んでいただきました。体型に合わないシャツをガマンして着ていた人や、海外でオーダーするしかなかった人が、顧客となってくれました」

 

山神さんのシャツは、20か所以上の採寸をはじめ、緻密な作り込みで知られますが、いちばんこだわっているのは、ボタンつけだとか。

「実は幼いときから、ボタンつけが大好きだったのです。母親の裁縫箱のなかにあるさまざまなボタンを、ひたすら生地に縫いつけていました」

小学校低学年のときから、ボタンつけが暇つぶしだったというから驚きです。

「ボタンつけは、シャツに命を吹き込むことだと思っています。アスリートと同じで、1日休むとカンを取り戻すために3日かかる。だから出張に赴くときも必ずシャツとボタンを持っていきます。今まで何万個というボタンを縫いつけてきましたが、ぜんぜん苦になりません。むしろ、もう楽しくて楽しくて」

まさに、シャツ職人になるために生まれてきたようなお方です。

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<ハウス テイラーズ ラボ>

ストラスブルゴのフラッグシップショップ3階に位置する、オーダーメイドの殿堂。スーツ、ジャケット、シャツ、パンツと、すべての紳士アイテムがオーダーできる。まるで劇場のような設えで、職人たちが作業する様を眺めることができる。アポイント制なので、来店前に必ず電話連絡を。

東京都港区南青山3-18-1 3F
Tel.03-3470-6367
営業時間/平日12:0020:00
土日祝:11:002000

http://strasburgo.co.jp/blog/tailor/

中村哲彦さん

中村哲彦さん

 HIKO取締役会長

text kentaro matsuo  photography tatsuya ozawa

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いま話題の超高級セレクトショップ、銀座HIKO(ひこ)のオーナー、中村哲彦さんです。この店で驚くのは、置いてある商品が、あまりに高額なことです。百万円、2百万円は当たり前。中には1千万円以上のプライスタグが付いているブルゾンがあったりします。もう洋服屋というより、外車ディーラーの世界です。ここにいると、だんだん感覚が麻痺してきて、例えば10万円のニットを見つけたりすると、「安い!」と思ってしまいます。

 

HIKOの創業は1986年、もともとは熊本のお店です。九州男児といえば、質実剛健なイメージですが、熊本はちょっと違うのだとか。

「熊本はファッション好きが多いのです。飛びつくのも早いが、飽きるもの早い、それが熊本県人ですね(笑)」

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 スーツはジリー。「世界最高のものしか作らない」というコンセプトを掲げるフランスのブランドです。素材はウール×シルクで、うっすらと上品な光沢があります。

タイもジリー。

「初めてジリーの商品を仕入れたのは、もう25年くらい前になります。カシミアのコートでした。品質が他のものとは全然違うので、びっくりしました。値段も倍以上して、こちらにも驚きました」

 

シャツは日子のオリジナル。

 

ラペルに挿したピンは、特注のホワイトゴールド製。「魚座なので、イルカをモチーフにしました」と。

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時計はアンティークのヴァシュロン コンスタンタン。20年ほど前にパリで購入されました。

 

シューズはイタリアのバレット。

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「がちがちにキメるのは嫌いなのです。どこか、抜けている部分がないと、粋じゃない。例えば私の場合は、スーツを着る時などは小物やシューズで少し遊びを入れています。

 

中村さんは、バブル期には、フェレ、ミッソーニ、フェラガモなどのイタリアン・ブランドを、いち早く九州に入れました。その後、自らの店HIKOを立ち上げ、しばらくはうまくいっていました。

「しかし、バブルがはじけて、売り上げが急にダウンしました。それまでは問屋から回してもらった商品を、そのまま陳列し、売れた分だけお金を払うというやり方でした。でも、そんな商売は続けられなくなった。そこで、自ら海外へ行って、自分がいいと思ったものを、直接仕入れることにしたのです。当時、われわれのような小さな店で、そんなことをやっているところはありませんでした」

 

海外へ出てみると、今まで見えていなかったものが、見えるようになったといいます。

「われわれが知らなかったいいものがたくさんありました。それらをお客様に紹介したいと思い、ひたすらやってきたら、こんな品揃えになったのです。でも最初に超高額商品を仕入れたときは、ドキドキしましたね。確か200万円のアストラカンのコートだったと思います。『売れなかったら、どうしよう』と何日か迷いました。しかし、どうしても頭から離れなかった。今だったら、なんとも思いません。仕入れは度胸ですね(笑)」

 

銀座に進出したのは、昨年の10月です。そのきっかけは熊本地震でした。

「あの地震で店は半壊し、何日も車中泊をするはめになりました。自然の力の前では、人間は無力だと思い知らされましたね。『人の命なんて、いつどうなるかわからない。だから、やりたいことはやっておこう』と思い、かねてから考えていた、東京進出を決めました」

 

現在では、娘の響子さんと二人三脚で店を切り盛りされています。

「娘はまだまだですね。面白い発想をすることもあるけれど、もっと経験を積まないと、経営者としては生きていけない。点数をつけるとすれば、60点くらいでしょうか」

となかなか手厳しい。しかし、その目は愛情に溢れていました。

 

世界中から選び抜かれた超一流品を見に、ぜひHIKOへ足を運んでみてください。

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 現在最も高額な商品は、ヘッタブレッツのクロコダイル・ブルゾン。価格は驚愕の1,400万円!

ヒコ店内

 HIKO銀座:東京都中央区銀座2丁目8-17
ハビウル銀座Ⅱ 2階  TEL.03-6264-4450