From Kentaro Matsuo

THE RAKE JAPAN 編集長、松尾健太郎が取材した、ベスト・ドレッサーたちの肖像。”お洒落な男”とは何か、を追求しています!

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松井雅美さん

松井雅美さん

アクス代表取締役

text kentaro matsuo  photography tatsuya ozawa

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空間プロデューサーの松井雅美さんのご登場です。かつてバブルの頃には、まさしく“時代の寵児”だった方ですね。“ナバーナ、レッドシューズ、タンゴ、インクスティックなど、80年代を代表する名店の数々を手掛けてこられました。空間プロデューサー”や“カフェバー”という言葉は、彼がいなかったら、生まれてはいなかったでしょう。意外なことにご出身は、東京の下町でした。

「もともとは上野桜木、寛永寺のすぐそばの出身です。浅草が目と鼻の先だったので、よく映画を観に行っていました。当時はウエスタンに憧れていましたね」

 

松井さんは、若い頃から相当な遊び人で、華麗なる交友関係をお持ちです。

「中学、高校と暁星学園に通いました。当時はJUNを着ていましたね。16歳頃からレースに夢中になって、船橋サーキットを走り始めました。当時の親友の実家だった川口アパートメント(直木賞作家・川口松太郎さんが手掛けた文京区春日の高級マンション。かつては加賀まりこさんや安井かずみさんなど、錚々たる顔ぶれが住んでいた)のプールでカフェを始めました。これが初めて手掛けた飲食かな(笑)」

 

ファッション・ブランドの経営も、学生時代から。

「通っていた赤坂のディスコ“ムゲン”の地下で、モデルの青木エミさん(マックスファクターモデル、井上順さんの元妻)と組んで、自分たちで作ったシャツや革ジャンを売り始めたのが最初かな・・・その後、73年に事故死したレーサー中野雅晴が、元エドワーズと組んで自由が丘でやっていたブティック“アップル”を引き継ぎました」

「DCブームの頃は、すごかったな。佐藤孝信さん(アーストンボラージュのデザイナー)やドン小西さんなど、知り合いのデザイナーたちが売れまくって、実に景気がよかった。そういえば青山のかおたんラーメンの向かいにあった、ジョルジオ アルマーニ初の路面店も手掛けましたね・・・」

 

松井さんの話を聞いていると、キラ星のごとき人々が、次々と登場します。この方は東京という街の中心にいて、ずっと時代をリードしてきたのだ、ということがわかります。

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 ジャケットはフランスのヴィコント アー。

「友人がインポートを手掛けているので、最近はここのものを着ることが多いです。ディテールに遊びがあって面白い」

チーフのように見えるのも、実は裏地を引っ張り出したものです。

 

シャツは、新宿伊勢丹でパターンオーダーしたもの。

「同じ生地で一度に3〜4枚作ります。藤村俊二さんには『シャツはシワがあっちゃダメ』と言われてましたね」

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時計はフランク ミュラー。

「15年ほど愛用しています。ふざけて偽物をしていたら、ある方から『そんなものするな』と言われて、本物を頂きました(笑)」

 

ジーンズは、ディースクエアード。

「ジーンズはほとんどここのものです。でもシルエットは必ず直してから着ます。実は私は、白金・広尾にキューズという洋服のお直し屋も経営しているんですよ。もう20年になります」

 

スエードのシューズはトッズ。

 

「基本はフレンチトラッドです。いつもネイビーブレザーにブルー系のシャツ、そしてジーンズの組み合わせ。靴とベルト、バッグの色を合わせるのがルールです」と。

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松井さんが若かりし頃は、まだ仕事と遊びの区別が曖昧だったようです。面白い人の周りに面白い人が集まり、自然と新しいことが始まっていったのでしょう。なんでも四角四面になってしまった現代から見ると、羨ましい時代です。

 

「今まで200件以上の店を作ってきました。最近もいろいろ手掛けていますが、民泊とかキャビンホテルみたいなものに興味がありますね。お洒落なヤツを作りたいと思っているんです」と、その創作意欲は衰えを知りません。

 

いま80年代のヒーローたちが、再び注目を集めつつあります。その代表格である松井雅美さんも、これから、さまざまな媒体で取り上げられていくことでしょう。

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撮影は松井さんがオーナーを務める “ジョイス ヴィンテージ”にて。骨董通りの隠れ家的レストラン。オーガニックな材料にこだわった、ヘルシーなフュージョン・フレンチが評判です。

東京都港区南青山5-8-5 Gビル南青山02B1

TEL.03-6433-5557 http://joyce-vintage.co.jp/

並木孝之さん

並木孝之さん

アイネックス 商品戦略部 部長

text kentaro matsuo  photography tatsuya ozawa

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ネクタイメーカー、アイネックスにおいて、商品企画の要となっているのが、今回ご登場の並木孝之さんです。

「かつてネクタイの企画といえば、生地を“選ぶ”のが仕事でした。しかしそうすると、他と同じようなものばかりになる。そこでわれわれは生地を“作る”ことにしました。イタリアやイギリスの機屋と、年に何回も打ち合わせをして、オリジナルの生地を充実させています」

そんな並木さんの情熱が、同社をネクタイ業界ナンバーワンの座に押し上げました。

 

「とにかくネクタイが、好きで好きで仕方ないのです。私のキャリアのスタートは、フェアファクス コレクティブでした。学生時代から、ここのネクタイの大ファンだったのです。社長の慶伊道彦さんは、今でも日本一カッコいい人だと思っています。フェアファクスに入社したくて、募集もしていないのにいきなり電話をして、会社へ押しかけたこともあります。便箋4枚にびっちり自分の思いを綴って、社長宛に手紙を出したこともあります。そんな熱意を汲んでくれて、最終的には働かせてもらえることになりました」

 

並木さんは、ガッツの人です。

「ネクタイに関しては、誰にも負けたくありません」

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スリーピース・スーツはソブリンハウスのオリジナル。

「このテラコッタ調の差し色が入ったグレンチェックが、実に今の気分です」

 

タイはアイネックスのオリジナル、ロバート フレイザー。

シャツは私も愛用しているアヴィーノ。

カラーピンはエリザベス パーカー。

「カラーピンはよくしますね。今シーズンらしさを演出するのにぴったりです」

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ゴールドのブレスレットは、サン ローランとボッテガ ヴェネタ。

私が「意外ですね」というと、

「洋服やカバン、革小物などは眺める程度ですが、ハイブランドのアクセサリーには、好みに合うものが多いんです」と。なるほど、ブランドに対する視点が、普通の人とは違いますね。

 

リングは、ロンドンのアンティーク屋で買った24金製。

 

時計は、60年代のヴァシュロン コンスタンタン。ゴールドの文字盤とアンティークならではの薄さが、購入の決めてです。

 

「今とにかく、ゴールド×ブラウンの組み合わせに惹かれています。従来はアクセサリーといえばシルバーでしたが、この秋冬はゴールドばかりでした。コーディネイトも以前は、ネイビーやグレイが多かったのですが、今季はブラウンをベースに、ボルドーなどを差し色にしています」

シューズはエンツォ・ボナフェ。

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本日のタイは大柄のペイズリーですが、並木さん曰く、究極のタイは無地だといいます。

「無地のタイって、最も男らしいタイだと思うのです。ウチでは、織りや組織の違いで、数多くのバリエーションを用意しています。無地タイを、どれだけカッコよく締められるかが勝負です」

 

そんな並木さんには、ネクタイ以外にもう一つ夢中になっているものがあります。それは“ニクタイ”です。

「月曜日の朝は、必ず5時に起きて、ランニングをします。月に150〜200kmくらいは走りますね。年に3、4回はマラソン大会に出ます。体脂肪率は、今でも10%以下ですよ。ファッションと肉体は、切っても切れないものだと思います。吊るしの洋服を、きちんと着られることが重要です」

ああ、2年連続で、すべてのパンツをお直しに出した私にとっては、なんとも耳の痛いお言葉です。

 

まさにストイックな情熱の人、並木さんですが、ひとつ不思議なのは、ウチのチャランポランで怠惰な人、ユーコー藤田ととても仲がいいことです。正反対のほうがウマが合うのかな? ユーコーには、彼の爪の垢を煎じて飲んで欲しいものだと、心から思います。