From Kentaro Matsuo

THE RAKE JAPAN 編集長、松尾健太郎が取材した、ベスト・ドレッサーたちの肖像。”お洒落な男”とは何か、を追求しています!

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黒岩真治さん

黒岩真治さん

FCAジャパン 広報部長

text kentaro matsuo photography tatsuya ozawa

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カメラマンの小澤君が、ある日息急き切って言いました。

「松尾さん、ものすごくカッコいい人がいるんです。ぜひブログで取材して下さい!」

彼にはずっとこのブログの撮影を担当してもらっていますし、他のファッション誌でも活躍している売れっ子カメラマンですから、お洒落な人は飽きるほど見ているはず。その彼がそこまで言うなら、よっぽど素敵な人に違いない・・そう期待しつつお会いしたのが、今回ご登場の黒岩真治さんです。アルファロメオ、ジープ、フィアットなど、5つのカーブランドを擁するFCAジャパンの広報部長をなさっています。

アルファ ロメオ4C スパイダーを駆って、颯爽と現れた実物は、ウワサ以上のカッコよさでした。

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スリーピース・スーツは、ガブリエレ パジーニ。ご購入は六本木のエストネーションにて。

「パンツのシルエットが気に入っています」と。

 

タイはフランコ・バッシ、シャツはルイジ・ボレッリ。

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 時計はアップル・ウォッチの初期ロット。

「発売と同時に買いました」

 

シューズは、トッズ。

「トッズの靴は、ドライビングに適していますね。これもラバーソールに突起があって、クラッチを繋ぎやすい」

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それにしても手足が長い。撮影場所のイチョウ並木をバックに立つ姿は、モデルそのままです。

「私はアメリカで生まれたので、アメリカのベビーフードを食べて育ちました。日本のものと比べて繊維質が少ないため、腸が過剰に成長することなく、胴が短く、手足が長くなるそうですよ」と。

自ら“珍説”と仰っていましたが、黒岩さんのプロポーションを見ていると、あながち間違いでもないような・・

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「私はいつも自分が“人にどう見られているか”を意識しています。広報マンは黒子に徹していてはダメだと思うのです。自分自身が“媒体”にならなければ」

 

そういう黒岩さんは、まさにセルフ・プロデュースの達人です。

 

「私は小学生の頃から、『国際的なビジネスマンになる』ということを公言してきました。そしてその絵に従って、人生を歩んできました。慶應義塾大学に入ったのも、“わかりやすいプレミアム感”を求めてのこと。学生時代は、ラルフ ローレンやバーバリーなど、いかにも慶應ボーイな格好をしていましたね。青山に住んで、メルセデス・ベンツやカッシーナでキャリアを重ねて来たのも、計算づくでした」

 

「18歳の頃から、一日も欠かさずに日記をつけています。月一年一でまとめて振り返り、次の目標を定めて、それに向かって努力します。声にコンプレックスがあったので、8年間ボイス・トレーニングを受けました。今度は通訳試験にチャレンジしようと思っています」

 

なんとなく流されるままに生きてきた私とは、正反対の人生です。

「そんなことばかりだと、疲れてしまいませんか?」と尋ねると、

「いいえ。逆にこうしているほうがラクなのです。目標のない人生なんて考えられません」ときっぱり。

 

こう書くと、ちょっと嫌味に聞こえるかも知れませんが、そんな感じが全然しないのが、黒岩さんの不思議なところです。むしろ話していて、とても楽しいし、人間的な温かさも感じます。こういうタイプの人には、初めてお会いしました。

 

しかしそんな黒岩さんにも、人生初の“想定外”な出来事が起こります。

「実は昨年結婚し、今年2月には子供が生まれるのです。これは計算できなかった(笑)」

 

さーて、パパ業の先輩として言えることは、“子供ほど思い通りにならないものはない”ということです。オンザレールだった黒岩さんの人生に、これからどんなハプニングが起こるのか、ちょっと楽しみにしているのです。

 

渡辺新さん

渡辺新さん

 壹番館洋服店 代表取締役社長

text kentaro matsuo  photography tatsuya ozawa

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壹番館洋服店の社長、渡辺新さんのご登場です。創業、1930年。三代に亘って続く、銀座を、そして日本を代表する老舗テーラーです。

「つい先日も、90歳を超えるお客様が、60年以上も前のコートを修理にお持ちになりました。彼が28歳のときに、私の祖父がお納めしたものです。こういうことがあると、われわれの商売は、単にモノを売っているのではなく、“時間”そのものを扱っているのだと思い知らされます」

 

うーむ、さすがに壹番館ですね。昨今は本場英国やイタリアで修業し、帰国した若手テーラーたちに注目が集まっており、私自身もそういった服を好んで着ていますが、歴史まで含めて考えると、壹番館に敵うテーラーは皆無だと言えましょう。

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スーツはもちろん壹番館で仕立てたもの。生地は昔のフィンテックスです。

「打ち込みがしっかりしていて、まるで“ブリットプルーフ(防弾チョッキ)”のようです。ヘビーウエイトな生地の方が、仕立て映えがして、個人的に好きなのです。弊社では、もちろん薄い生地も扱えますが、本当にテーラードを愛している方々には、こういった生地を好まれる方が多いですね」

 

ベストも壹番館。生地はヴィンテージのフォックス ブラザーズ。

「昔のフォックスは、こんな、ちょっと黄色がかったグレイで有名でした」

びっくりしたのは、背中部分。なんとホルスタイン柄のフェイクファー地で出来ています。

「オーダーメイドは、決してコンサバだけではありません。オーダーだからこそ、もっと遊ぶべきだと思います。最近では、そういった注文も多いのです」

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シャツも壹番館オリジナル。ここではシャツのオーダーも出来るのです。ボタンダウンのダブルカフスとは珍しい。

「カフスのターンナップ部分を見て下さい。ほら、曲線を描いているでしょう? 昔の宮廷衣装からインスピレーションを得て、作ってみました」

こんな遊びも、オーダーならでは、です。

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シューズはエドワード・グリーン。他にジョン ロブもお気に入り。

ポイントのレッドのソックスは大阪の専門店にてオーダーしたものです。

「ソックスは葬式以外、いつも赤なのです。以前見たバチカンの写真に、真っ赤なソックスをはいている人がいて、『ちょっと、いいな』と」

私の知る限り、希代の洒落者、故・桃田有造さんも、いつも赤のソックスを愛用されていました。お洒落を極めた人は、赤靴下に至るのでしょうか?

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「テーラーの世界は日進月歩。ただ昔からの技術をなぞっているだけでは、ダメなのです。テーラー自身も、進化していかないと」

 

老舗のテーラーの跡取りとして生まれた渡辺さんですが、大学卒業後ヨーロッパに渡り、そこでずいぶんと新しい体験をしたそうです。

「最初は英国のテーラーリング学校へ入ったのですが、当時はミラノ・ファッションの全盛期。アルマーニ、ヴェルサーチ、ジャンフランコ・フェレといったデザイナーたちが大活躍していました。そこで、私もミラノへ移り、フェレが教授をしていたデザイン学校へ入学したのです。そこでは本当にいろいろなことを教わりました」

「当時フェレが言ったことで印象深かったのは、『クリエーションは天から降ってくるものではない。そんなものが通用するのは、せいぜい1、2年だ。もしファッション・ビジネスを10年続けたいなら、大切なのは、とにかくリサーチをすることだ』という一言でした」

 

つまり、一見ひらめきがすべてのように思えるモードの世界も、実はロジカルかつ綿密な調査の積み重ねによって成り立っている、その事実に気付かされたということです。その経験は、老舗テーラーを背負って行く立場になってからも、大いに役立っているといいます。

 

「人間は、一人一人がオーダーメイドの人生を歩んでいます。それぞれの状況を踏まえて、さらにその人を輝かせるにはどうしたらいいか、を考えるのがテーラーの仕事だと思います。だから、この仕事にクリエーションは欠かせないものなのです」

 

「進化する老舗」という言葉は、まさに壹番館と渡辺さんのためにあるものでしょう。