From Kentaro Matsuo

THE RAKE JAPAN 編集長、松尾健太郎が取材した、ベスト・ドレッサーたちの肖像。”お洒落な男”とは何か、を追求しています!

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佐藤隆彦さん

佐藤隆彦さん

 株式会社トラバース 営業マネージャー

interview kentaro matsuo  photography tatsuya ozawa

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言わずと知れた、元プロ野球選手、G.G.佐藤さんのご登場です。現役時代のご活躍については、皆様もよくご存知だと思います。引退後の現在は、父上が経営なさっている株式会社トラバースの営業をなさっています。トラバースは、測量・地盤改良などを専門とする会社で、野球とはまったく違った世界への転身です。

 

「プロ野球現役時代は、けっこう派手なものも着ましたが、今は営業という仕事柄、派手なものは避けるようにしています。スーツは紺やグレイ、シャツは白かブルー、それに無地のタイを合わせることが多いですね。靴も黒ばかり履いています。お客様にいかにイヤな思いをさせないか、ということばかり考えています。出会う方によっては、時計も地味なものに替えていくこともあります」

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私が、ラペルに差してあるピンについて問うと、

「これはウチの社章です。測量に使われるトラバー点を模しているんです。ええ、いつも着けていますよ」と、まさに営業マンの鑑のようなお答えです。

 

マイクロチェックのグレイスーツは、ユナイテッドアローズのソヴリンハウス。

「最近買い物は、二子玉川のユナイテッドアローズですることが多いですね。仲がいい販売の方がいるのです。またサイズが合うものが揃っていることも大きな理由です」

 

身長184cm。現役時代より15kg減量し、まさにモデル顔負けのプロポーションですが、逆に合うものを見つけるのが大変だと言います。

 

シャツはユナイテッドアローズでオーダーしたもの。

「腕が長く、ネックサイズが大きいので、オーダー品ではないとダメなのです」

 

タイもユナイテッドアローズのオリジナル。

チーフは、ミラノのブライアン&バリーにて。

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 時計は、ロレックスのエクスプローラーⅡ。1980年の初期型モデルです。

「これは実は最近買ったものです。スティーブ・マックィーンに憧れているので」

なるほど、実に“通”なチョイスです。

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シューズはオールデンのコードヴァン製。

「オールデンは大好きで、10足くらい持っています。これはハワイに行った時、ロイヤルハワイアンセンターにあるシューズショップ、レザーソウルで買いました」

 

「コーディネイトのポイントは?」との問いには、

「グレイのスーツを中心に、ブルー・オン・ブルーでまとめてみました。大柄のストライプタイをアクセントとしました」と的を射たお答え。

 

「昔から、野球と平行して、ファッションは大好きでした。小学校の高学年の頃には、当時人気だった吉田栄作さんをマネて、ブルゾンに白いTシャツを着ていました。それからスニーカーブームが来て、エアージョーダンやエアマックスに夢中になりました。大学生の頃は、アルマーニに凝って、全身モノトーン。アメリカにいた間は、いち早くアバクロを着ていましたよ」

 

なるほど、やはり若い頃からファッションがお好きだった方は、基本が出来ているということでしょうか。その後プロ時代を経て、イタリアに在住され、イタリア流のスタイルに出会います。

 

「イタリア人って古いものを大切にするじゃないですか。私もヴィンテージものが大好きなので、彼らのスタイルには共感できました。新しいものはお金さえあれば買えますが、ヴィンテージはお金だけではダメです。そこにはモノとの“出会い”がありますよね。『父から受け継いだ』とか、そんなストーリー性に惹かれるんです」

 

「ネクタイのノットがキレイですね」と褒めると、

「ありがとうございます。昔からノットの結び方は、何回も練習してきましたから。ちょっと小剣を長くするのが、私流です」と。

 

私は失礼ながら、野球選手というのは、?(ハテナ)なファッション・センスの方ばかりと思っていたのですが、佐藤さんに会って、その考えが180度変わりました。こういう恵まれた体躯と華やかなフェイスの方が、アンダーステイトメントなファッションに身を包むと、本当にカッコよく見えますね。

 

新保哲也さん

新保哲也さん

 

株式会社 新保哲也アトリエ 代表取締役社長、一級建築士

interview kentaro matsuo  photography tatsuya ozawa

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  私がピッティに行って、いつも残念に思うのは、日本人は色の使い方が下手だということです(私も含めて)。サイズ感やディテールへのこだわりは世界一なのに、色が地味なので、ちっとも目立たないのです。しかし世の中に、必ず例外はあるもの。今回ご登場頂いた新保哲也さんは、ご覧のように、日本人離れした色彩感覚の持ち主です。

 

「今日は抑えめにしました」という言葉が、どうしても信じられないのは、私だけではないでしょう。色と柄の洪水のような着こなしは、まるで“歩くアート”です。

 

実は新保さんは、ワッフル・ケーキの店 R.L(エール・エル)のオーナーなのです。1991年、武庫之荘に第一号店をオープンして以来、順調に売上げを伸ばし、今では全国に74店舗を展開する一大チェーンとなりました。ワッフルという食材に特化しつつ、その中で、たくさんのバリエーションを楽しめるところが、人気の秘密です。

しかし、その開業の動機は、一般のケーキ店オーナーとは、大分違っていました。

 

「もともと建築家でしたから、美術品や骨董など、美しいものが好きでした。ある日、大好きだったルネ・ラリックの花瓶を、無理をして手に入れました。そして、この花瓶に似合う店を作ろう、と思い立ったのです。最初はガラス繫がりで、照明器具店をやろうと思いましたが、どうも儲かりそうもない。次にバーをやろうかと思いましたが、私はタバコが嫌いだった(笑)。悩んだ末に、留学先のヨーロッパでよく食べていた、ワッフルの店を思いついたのです」

 

というわけで、一本の花瓶のためだけに、ワッフル店を始められたそうなのです。R.Lとは、ルネ・ラリックのことなのですね。それにしても、こんな不思議な理由で事業をスタートさせ、それが大成功してしまったのですから、神様に愛されている人って、本当にいるのですね。

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スーツはスコットランドのタータンメーカー、ロキャロン社のシャギーチェック地を使い、大阪のテーラー、ラクア&シーにて仕立てたもの。

「スーツ類は、すべて自分で選んだ生地で仕立てています。このようなヴィンテージ生地を使ったものが多いですね」

 

シャツもラクア&シー。ネクタイはロンドンのドゥシャンプ。

 

フエルト帽はボルサリーノのウサギ製。眼鏡はアメリカのタート。ストールはイタリア、フィレンツェのカンティーニ。各アイテムが、いちいち「濃い」ですね。

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 時計は、パテック フィリップのRef.2526、通称トロピカルと言われているモデルです。時計道楽の終着点のひとつで、私も喉から手が出るほど欲しい時計。これを入手するためだったら、5年は寿命が縮んでもいいと思っているほどです(あ、その時点で、即死かもですね)。

特にこのWG製は30個しか製作されず、現存するものは10本くらいで、さらにミント・コンディションとなると、その希少性は計り知れないとのことでした。

 

シューズはベルルッティ。アンディ・ウォーホルのために作られた、有名な“アンディ”です。

「靴は、ベルルッティしか履きません」

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そしてバックに写っている愛車は、シトロエンDS。ギャビン・ライアルの傑作ミステリー、『深夜プラス1』にも出てくる、世紀の名車です。これまたミント・コンディション。その後部座席に座らせて頂きましたが、まるで風船の上に乗っているような、なんとも言えない心地よさでした。

 

一見破天荒に見えるコーディネイトですが、実は考え抜かれたものなのです。

「前の晩に次の日のコーディネイトを考えるのですが、どうしてもうまくキマらず、仕方がないので、タイとチーフを何本かカバンに入れておき、途中で替えることもあります。1年を通じて、ほぼ毎日違うスーツを着ていますが、『うまくいかなかったから』という理由で、同じモノを2日続けて着ることもあります。リベンジですね(笑)」

 

「社員全員で、毎年ファッション・コンテストをしています。大賞に選ばれると、豪華な賞品がもらえるんですよ」

こんな会社、アパレルでも聞いたことがありません。

 

「夢は世界一お洒落になること」と衒いなく言い放つ新保さんは、すべてに対して度を超えたこだわりをお持ちです。ファッションも、ビジネスも、建築も、クルマも、すべては新保哲也というアートの一環なのです。