Frederic Panaiotis Interview

世界最古のメゾン“ルイナール”
その最高醸造責任者が語る、
シャンパーニュを日本で味わう喜び

November 2017

 

シャンパーニュがアートといわれる理由

 

 1729年に創業し、現存する世界最古のシャンパーニュ・メゾンとして名高いルイナール。その歴史はベネディクト派の高僧ドン・ルイナールに始まった。創業当時から現在に至るまで、歴史的建造物に指定されるガリアローマ時代の白亜質の石切り場跡を、熟成用セラーとして使用していることでも有名だ。

 

 名門の誇り高い精神を受け継ぎ、舵取りを担う最高醸造責任者、フレデリック・パナイオティス氏が来日し、その哲学と日本への想いを語ってくれた。

 

 

 氏は幼少期より、祖父が所有するブドウ畑を遊び場としてきた。“シャンパーニュ地方ワイン生産同業委員会”で専門知識を習得したのち、本国フランスだけでなく、米国カリフォルニアなどでも経験を積み、2007年に現職へ就いた。スティル・ワインではなく、シャンパーニュ造りに魅せられた理由を、氏はこう語る。

 

「シャンパーニュは、発酵させる回数が2回で、さらにアッサンブラージュ*1や、ドサージュ*2などの工程があり、完成までのプロセスがとても複雑です。常にクリエイティブであることが求められる、ロマンあふれる仕事だから、シャンパーニュ造りに魅せられたのです」

*1)複数の畑で収穫されたブドウから造られた、収穫年の異なる原酒をブレンドする工程。

*2)原酒となったワインに糖分を加えたものを添加し、味わいを調整すること。

 

 

 醸造責任者は、天候によるブドウの出来に左右されず、ブランドとしての高いクオリティを保ち続けるために、膨大なストックの原酒を巧みにブレンドしなければならない。固定のレシピはなく、人の味覚や嗅覚など、五感のすべてを駆使してジャッジする。自然の産物であるブドウと、造り手の叡智が融合して初めて完成する作品。これが、シャンパーニュがアートといわれる理由である。

 

 

 

 

 

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