CHARLES HEIDSIECK Managing Director
STEPHEN LEROUX Interview

レジェンドの魂を受け継ぐ男

Monday, March 25th, 2019

世界的な視野に立ち、シャルル・エドシックを成長へと導くステファン・ルルー氏。

創業者のビジネスセンスを継承する氏が語る、メゾンの誇りと未来の展望とは。

 

text chiharu honjo  photography natsuko okada

 

 

Stephen Leroux

ステファン・ルルー

1966年イギリス・グラスゴーに生まれ、シャンパーニュで育つ。ネゴシアンの曾祖父を持ち、妻はシャンパーニュメゾンを営むジムネ家の家系。バンカーになったあと、ヴランケン・ポメリーに入社。その後ボランジェ、ルイ・ロデレールといった有名メゾンで重責を歴任し、2013年にシャルル・エドシック代表に就任する。英仏を含む数カ国語を操りグローバルに活躍。

今回の撮影は、フランス料理の真髄を堪能できるトゥール・ダルジャン(TEL.03-3239-3111)にて行われた。贅をつくした一品を味わえる美食の館は、豪華絢爛な空間だった。

 

 

「我々は、いつもエモーションを喚起するシャンパーニュを造りたいと考えています。生産量は少ないけれども、絹のようなテクスチャーを感じていただける究極のシャンパーニュを目指しています」

 

 この言葉を実現しているのが、160年以上の歴史を誇るシャルル・エドシックを牽引するステファン・ルルー氏だ。

 

「もともとファイナンスの道に進みたかったのでバンカーになりましたが、貿易に携わりたいと考え、シャンパーニュ業界に巡り合い、数々のシャンパーニュメゾンを渡り歩いてきました。特にシャルル・エドシックの創業者は映画のモデルになるほど非常にユニークで、1852年にフランスからアメリカへ渡ってビジネスチャンスを自ら摑みとり、レジェンドとなった人物です。彼の持つ情熱的なスピリットを継承できて光栄です」

 

 そう熱く語るルルー氏に、メゾンが受け継いできたスピリットは何か尋ねた。

 

「何よりもクラフトマンシップです。シャンパーニュになるブドウの中で、供給量がわずか15%のグランクリュとプルミエクリュの畑で栽培したブドウだけを使っているだけでなく、生産過程では、収穫したブドウの一番しぼりだけを使い、ブリュットレゼルヴには平均10年熟成させたリザーヴワインを40%ブレンドしています。このこだわりが、“飲めばすぐにそれとわかる”と評される、シャルル・エドシックだけの深い味わいを生み出しているのです。ほかに、ローマ時代の採石場跡であるクレイエールと呼ばれる地下約30メートルにあるセラーも挙げられます。温度と湿度が常に一定のためシャンパーニュの熟成に最適で、必要不可欠なものなのです。世界遺産に登録されているほど貴重な場所でもあります」

 

 その類稀な環境が生み出したシャンパーニュは、1865年にザクセン・ワイマール王室、1897年には英王室エドワード7世の御用達となり、政治家のチャーチルや女優のジョセフィン・ベイカー、画家のダリなどにも愛飲されてきた。世界の王室や宮廷だけでなく、数々の著名人にまで愛されるメゾンとして君臨したのだ。

 

 そんな格式高いシャンパーニュと相性のいい料理を伺うと、意外にも日本料理という答えが返ってきた。

 

「例えばブリュットレゼルヴは、力強さとフレッシュ感というふたつの個性を持つため、ステーキや焼鳥だけでなく、刺身などの繊細な料理にも合います。ブラン・ド・ブランは牡蠣やお寿司、ロゼレゼルヴだと神戸ビーフと相性がいいですね」

 

 

メゾンを象徴する極上のシャンパーニュ「ブリュットレゼルヴ」。深みのある金色が美しい。フレッシュさとコクを併せ持つシャルドネ、力強さと骨格のあるピノ・ノワール、なめらかな口当たりのムニエを均等にブレンドしたベースに、リザーヴワインを加えている。クレイエールで長期熟成させることで、繊細で複雑なアロマを実現。Charles Heidsieck日本リカーTEL.03-5643-9770、ECサイト:www.kbwine.com

 

 

 

 実はルルー氏、来日歴が20回以上もある親日家なのである。

 

「日本の市場は、とてもポテンシャルが高いので、何度も訪れて注力しています。というのも、シャルル・エドシックは、自国のフランスをはじめ、英国、アメリカ、スカンディナビア、日本など、プレステージなメゾンだということを理解してくれる国に輸出先を絞っているからです。誰にでも買ってほしいわけではない。シャルル・エドシックのストーリーを理解して、シャルル・エドシックだから買いたいという人に飲んでいただきたいのです。まさに、THE RAKEの読者のような方々です」

 

 ルルー氏は先述の通り、流通エリアを再編成することでブランドイメージを確立し、右肩上がりの急成長へと導いた。しかし、急すぎる成長は品質を損ないかねないため、成長をもコントロールしているという。ルルー氏はこう続ける。

 

「私は何かを成し遂げようとするとき、創業者シャルルの気持ちになって考えています。自らの直観を信じ、必要とあればどこへでも赴き、絶好のビジネスチャンスを見つけるためです。今後は、メゾンと同じスピリットを持つ企業とパートナーシップを組む活動も、積極的に行っていこうと考えています」

 

 将来を見据えているルルー氏の目には、シャルル・エドシックの揺るぎない未来像が、すでに見えているようだ。