THE RAKE JAPAN from Yuko Fujita

THE RAKE JAPAN副編集長、藤田雄宏が取材した、
世界中の友人たちや気になるウェルドレッサーたちをご紹介します。

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Noriyuki Ueki(Sartoria Ciccio)

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  • In Tokyo
  • On Nov 7th, 2016
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上木規至 Noriyuki Ueki 

Sartoria Ciccio

text & photography  Yuko Fujita

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Jacket  Ciccio

Trousers  Ciccio

Shirt Les Leston for Ciccio

Tie Sevenfold per Ciccio

Shoes   Il Micio

 

僕の数少ない飲みトモでもあるサルトリア チッチオの上木規至さんです。

 

2003年から3年間ナポリで修業された上木さんに、僕は前から勝手に妙な親近感を抱いていました。

フツウはナポリに長く住んでいたら、中身も「俺が俺が」なナポリ人と化していくものですが、

上木さんの場合ナポリ人化するどころかいつも控えめで飄々としているので、

この人は「鈍感力」に勝るからナポリで長く修業できたのかなぁと勝手に想像していたのですが……。

お酒の席で修業時代のエピソードを聞き出すと、出てくるわ出てくるわ。

当時相当な苦労をされていて、腕を磨くためにストイックな生活にずっと耐えてきたことがわかってウルウル。

以来、上木さんに対しては常にリスペクトの眼差しです。

 

 

さてさて工房で仕事をしているときの上木さんは、まるで仕立ての神様がのり移ったかのような芸術的な手捌きを見せてくれます。

単に仕事が早いだけじゃなくて所作が大変美しく、縫いひとつをとっても正確且つちゃんと甘さ & ムードがあるんですよね。

今までたくさんのサルトの仕事を見てきましたが、彼の手捌きを初めて見たときはオーラのようなものさえ感じ、

“本物のナポリ感”に惚れ惚れしてしまいました。

 

 

そんな上木さんと去年の11月、ちょうどイタリアにいる時期が重なったこともあって、ナポリで合流してサルトリアを一緒に回る機会がありました。

午前中に一緒に理髪店のBOELLISに行って髪を切ってから、サルトリア巡りをしたのはとても楽しい思い出です。

自分はこれまでナポリだけでもおそらく100を超える工房を回ってきましたが、初めてのところに行くと、今でもやっぱり胸が躍ります。

上木さんの師匠Antonio Pascariello氏は本人の風貌もさることながら、穴蔵みたいなところにあるサルトリアがまた衝撃的で、超ワクワク。

それでいてとてもきれいな服を仕立てていたので、上木さんの仕事の美しさは師匠譲りなんだなって思ったのを覚えています。

素敵な写真も撮れたので、いつか彼のこともご紹介したいところです。

 

それともうひとつワクワクしたのが、モンテサント地区のアパートに工房を構えている

とあるパンツ職人(アンブロージでもモーラでもチェッラートでもありません)。

実は去年、僕は毎朝モンテサント駅で降りてイタリア語の学校に通っていたので、

「えっ、毎日通っていた道にこんなパンツ工房があったんだ」って、かなりのサプライズでした。

本来、街のどこにでも一流の仕立て職人がいるのがナポリなので、驚くべきことでもないのですが。

 

ちなみにモンテサントはこんな感じのところです(YouTubeから拝借)。

ピーニャセッカの市場は野菜も果物も新鮮な魚介もとにかく安いし、レストランもバリバリの下町価格。

ちなみにピッツェリアだったらDa Attilio、トラットリアだったらLa Taverna del Buongustaioが下町風情全開のディープな食堂でオススメです。

トレド通りにぶつかるCeraldi Caffè のエスプレッソはナポリでいちばん好きかも!

 

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と、話が脱線しちゃいましたが、本題です。

 

今回の撮影時に上木さんが穿いていたチッチオのトラウザーズは、実はナポリ製のプレタポルテなんです。

正確には型紙と裁断までを上木さんが手掛け、それをナポリに送って、先のモンテサントのパンタロナイオが縫製しています。

(10月からスタートしたばかりで、11月24日に発売されるTHE RAKEのISSUE13でもご紹介しています)

 

ここのメインの職人さんはおじいちゃん2人。

かつてはアントニオ パニコのトラウザーズを請け負っていただけに、腕はめっちゃブラーヴォです。

ただ、ナポリのこの手のハンドメイドトラウザーズって、日本に仕入れるとどうしても個々の製品のばらつき問題が生じてしまうので、

サルトが常駐していないセレクトショップで扱うのはちょっと難しいんですよね。

でもチッチオのトラウザーズは裁断までを上木さんが手掛けているからバラつきが少ないし、

フィッティングしたうえで補正するのが前提なので、そういった問題はすべて解決してくれます。

ちなみに納期は約10日ほど。

生地は全3種で、グレーフランネル(チャコールとミディアム)が¥79,000、ベージュのコットンツイルが¥74,000です。

ちなみに僕はちょうど上木さんにオーダー中のツイードのジャケットに合う、グレーフランネルのトラウザーズを購入しました。

 

今までのナポリのトラウザーズって、作り手の主張が色濃く反映されているものがほとんどでしたが、

こちらのトラウザーズは極力主張を抑えた作りになっています。

正確にいうと、この洗練されたスタイルこそが上木さんの美意識でもあるのですが。

極端にテーパードさせることもなく、股上はやや深めのクラシックタイプで、全体的なシルエットも限りなく中庸。

ディテールもシンプル化が徹底されています。

いろいろオーダーを経験されてきて「やっぱり最高のフツウがいいよね」という結論をお持ちの方たちには、

チッチオのナポリ製トラウザーズは最上の選択と言えるのではないでしょうか(最高のフツウって探すとなかなかないんですよね)。

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そういえば、上木さんのこんな言葉がすごく印象に残りました。

「自分はナポリで3年間修業をしてきて、いろいろな職人さんからたくさんのことを学ばせてもらいました。

ここ数年、ナポリの仕立てが世界的に注目されるようになって、名の知られたサルトは裕福な生活を送れるようになりましたが、

下請けの職人さんは昔とさほど変わらない生活をしています。自分が彼らに少しでも恩返しをできたらなと思ったのが、

彼らと取り組みを始めたきっかけです」

 

 

サルトリア仕立ての文化を、国の垣根を超え、お互いが協力しあって継承していくのって本当に素晴らしいことだと思います。

ここのトラウザーズ工房でもパチパチ撮ってきたので、機会を改めていつかご紹介できればと思います。

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