THE RAKE JAPAN from Yuko Fujita

THE RAKE JAPAN副編集長、藤田雄宏が取材した、
世界中の友人たちや気になるウェルドレッサーたちをご紹介します。

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Kenichi Hatsuta(United Arrows)

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  • On Jun 26th, 2017
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初田健一(United Arrows)

photography & text  Yuko Fujita

_MG_2554A

suit    Sartorio

shirt    Salvatore Piccolo

tie    Holliday & Brown

belt    Charvet

Shoes  Edward Green

pocket square   Simonnot Godard

watch    Rolex

 

ユナイテッドアローズにはTHE RAKE JAPANのissue 15の特集「The 10 Rakish Men」のひとりにも選ばれた鴨志田康人さんを筆頭に

世界的なウェルドレッサーの方たちがたくさんいますが、今回ご登場いただいた販売部 部長の初田健一さんは、

鴨志田さんとはまた異なるアプローチでいつもエレガントなスーツスタイルを見せてくれる、UAを代表するスーパー ウェルドレッサーです。

初田さんはUAの中ではコンサバティブなスタイルを好む方ですが、実はミクロの世界でアップデートされていて、

僕はそんな初田さんのスタイルがとても大好きです。

前からぜひご登場いただきたいなと思っていた、僕が最もリスペクトしている先輩のひとりでもあります。

2つボタンスーツのあえて下のボタンだけ留めたスタイルといいポージングといい、めっちゃ絵になっていますね!

 

初田さんは僕の2つ上の1973年生まれ。

17歳のときにユナイテッドアローズの渋谷店がオープンし、その頃からUAでバリバリ買い物をしていたという根っからのUAラバーです。

ちなみに高校生の頃はラルフ ローレンの古着にゴローズのアクセサリー、ヴィンテージのジーンズにレッドウィングなどを合わせていたバリバリの渋カジ系だったそうです。

「大学生になるとこれまでのゴローズからクロムハーツに感化され、英国のシャツをかじってからルイジ ボレッリのシャツを着るようになって、

それにセントジェームスのバスクシャツ、グラミチのパンツを穿いて、グッチのビットサンダル、ウィグワムのソックスみたいな、

当時の流行であったアウトドアミックスを楽しんでいました。

その上にラルフ ローレンのブレザーを合わせたりして、今思うと無茶苦茶な合わせでしたね(笑)」

本人は謙遜していますが、こういうミックススタイルってセンスのよさがモロに問われるので、

かなりカッコよかったんだろうなぁと想像しています。

そんな初田さんが大学4年生のとき、原宿本店の店頭で人材募集の貼り紙を見つけ、アルバイトに応募したら採用され、

そのまま大学を卒業して正社員になりました。

_MG_2572時計はお父様の形見のロレックスのオイスター パーペチュアル デイトジャスト。「自分にはこれがちょうどいいんです」と初田さん。

 

UAに入ってからはより本格的にクラシコイタリアの世界を知るようになり、

ボレッリのシャツからはじまって、マロのニット、インコテックスのトラウザーズを合わせつつも、

そこにドリスヴァンノッテンとか、クリストフ ルメールを合わせたりもしていたそうです。

 

「原宿本店には、全身クロムハーツの怖そうなお兄さんがいたり全身デザイナーズブランドを着た人がいたかと思えば、

ピオンボのスーツを着て全部の指にクロムハーツを着ている人がいたりと編集の幅の広さがとても楽しくて、

そのミックス感、アヴァンギャルド感が好きでした」

 

初田さんは原宿本店のショップスタッフを3年間担当したのち、ザ ソブリンハウスに異動となり、

29歳でザ ソブリンハウスのバイヤー、30歳からUAのドレス部門のバイヤーを務めます。

2005年、32歳でMDになり、その後、企画・バイイングを束ねる調達部門の長に。

昨年からは販売部門の長を務めています。

 

_MG_2580ラバーメッシュベルトはシャルベ。

 

 

そんな初田さんに対して僕が抱いているイメージをひとことで言うと、ネイビースーツの着こなしにすごく長けたウェルドレッサー、です。

「先輩からは、紺のスーツをカッコよく着こなせないと、何を着てもダメだぞって、口を酸っぱく言われてきました。

そのときから、せっかくUAにいるのだからネイビーのスーツを一人前に着こなせるようになりたい、という思いが芽生えるようになりました」

 

お会いすると、だいたいいつもネイビーの無地のスーツを着られていて、それでいてマンネリ化していなくてとても洗練されているんです。

 

「目立つ格好をして個性を主張する表現方法もありますが、コンサバでいることも個性だと思っていて、

その中で出せる品のよさもあると思うんです。これ見よがしな格好はあまりしたくありません。

そういった意味で、誰もが着るベーシックなネイビーのスーツをきっちり着こなしたいという思いは、人一倍強いかもしれません」

 

初田さんの場合、ネイビーの無地といってもコットンもツイードも着るし、モヘアに関しては1年を通して愛用しています。

 

「冬でもモヘアのネイビースーツを着ているのですが、品よくどこでも向き合えるような気がするんです。

今はUAでもザ ソブリンハウスでも1年中モヘアスーツを展開していますが、モヘアならではの光沢とかシワの入り方が好きなんです。

新しいブランドを見つけると、必ずといっていいほど最初にモヘア混のネイビー無地のスーツを作ります。

自分でグレンチェックやブラウンスーツを着ると、どうしても違和感があるんです」

 

_MG_2560スーツはシングル2Bのピークトラペル仕様。小ぶりなシャツの襟にタイのノットをギュッと絞って。

 

それと、初田さんのスタイリングで注目したいのが、ネックサイズにこだわったシャツです。

すごく参考になると思ったのは、ネックサイズを1サイズあげて、ネックポイントを下げて着ている点です。

これはすごく今の気分だなって思うし、そういう感覚的なところでこだわっているのは、やっぱり初田さんならではだと思います。

 

「シャツの台襟は高いものより低いほうが好きですし、

サイズもジャケットを脱いだときにそこそこのゆとりがあって、少しブランジングしているくらいが好きなんです。

今春夏からターンブル&アッサー(ロンドンストライプよりやや太い、ピンク、イエロー、コバルト、ネイビーなどの

ブッチャーストライプをラインナップ)を展開し始めたんですけど、

日本人向けサイズではなくボディではなくあえて本国ボディで展開しています。

男性が肩の力を抜きつつ品よくシャツを着るには、

今は英国ボディのシャツをノータイで合わせるくらいのほうが素敵に見えると思うんですよね。

英国のシャツはイタリアのシャツよりも襟腰が低くて襟も少し硬いんですけど、

そういうのをボタンをはずしてサラリと着るのがカッコいいなって。

襟の開きがトゥーマッチすぎないのもいいですね。

人から見るとわかりにくいのですが、レストランとかでひと目で洋服屋とわかるこれ見よがしな格好は、

自分のスタイルではないんです。

とはいえ、ファッショニスタたちの輪の中にいても違和感がないスタイルを心がけています」

 

ちなみにネクタイに関しては、鴨志田さんも言ってましたが、今はプリントものが断然気分だそうです。

 

「プリントのネクタイはディープな世界、コンサバな世界が気になっているぶん、ネクタイで自己主張を出すのが自分らしいかなと。

台襟が低めの小ぶりな襟で、ネクタイのノットはギュッとコンパクトにして端正な感じでいきたいですね。

あまり幅広いネクタイで主張するのも好きではないので、やや細めのものを好んでしています」

 

色数は絞ってコーディネイトしながら、シャツとタイに工夫を凝らすことで、すごく端正なスタイリングに仕上がっていますよね。

シャツのブルーのトーンも然り、べーシックだからこそ自身のこだわりを細かなところにまで反映していることころはぜひ参考にしたいところです。

 

_MG_2582靴は808ラストが登場したときに購入したというエドワード グリーンの「BEAULIEU(ビューロー)」。

 

 

「イタリア人だとマッシモ・ピオンボなんかもそうですけど、いつもブルックス ブラザーズの擦り切れたボタンダウンシャツを着ていて、

自分が作るものからは想像できないシンプルな恰好をしていますよね。

表現したいものと、自分の身に着けるものとの境をしっかり作っていて、自分のスタイルを貫き続けているんです。

フェルモ フォッサーティのオット・マンテーロにしてもいつもボウタイをしていて、独特の雰囲気があります。

コンサバティブでいることが絶対にいいというわけではないですけど、やり続けていればそれが個性になるわけです。

紳士の世界はそこが面白いし、自分もそういうふうになれたらいいなと思います」

ゲーリー・トック GARY TOK (Author of  “Master Shoemakers”)

 

text & photography Yuko Fujita

Gary Tok_MG_9863

suit Liverano & Liverano

shirt Mystery Tailor

tie Vanda Fine Clothing

shoes Il Micio

 

 

今、世界は空前のビスポークブームです。

 

かつては英国、イタリア、フランスを中心とした紳士の文化だったビスポークですが、

一流とされるテーラーやシューメーカーは、ここ数年で今最もホットな北欧を含めたヨーロッパ各国、アメリカやカナダ、

そしてアジア、オセアニアにおいても人気となり、世界のウェルドレッサーたちはビスポークに夢中です。

 

素晴らしい腕をもったニッポンの職人さんたちも世界のウェルドレッサーたちからかなりの注目を集めており、

日本人の職人が世界を飛び回ってトランクショーを開催することは、今やなんら珍しいことではなくなりました。

 

と、大いに盛り上がっているビスポークシーンの中にあって

昨年末にビスポークシューズのフォトブック『Master Shoemaker』を刊行したGary Tokさんは、

日本人を除いたアジア人の中でいち早くこの世界に足を踏み入れたビスポーク アディクトです。

 

Garyさんは1974年にマレーシアで生まれ、15歳でシドニーに渡り、大学で経済を学んだのち、

2006年からは香港に拠点にして経営コンサルタントとして活躍されています。

 

「メンズクロージングの世界に興味をもったきっかけは、香港のテーラーW.W. Chan & Sonsと出会った2006年からです。

彼らの素晴らしい仕立てに触れたことで、私の魂はビスポークの世界へと誘われました。

そこからフィレンツェやナポリなどのさまざまなテーラーで仕立てるようになり、

靴の世界にも自然と足を踏み入れるようになったのです。

2010年、熟考を重ねて仕立てた深谷秀隆さんのIl Micio が、私にとって初めてのビスポークシューズとなりました。

彼の靴の素晴らしさに触れ、以来、ビスポークの深淵なる世界にどっぷりと浸かるようになりました。

自分の足のことをよく理解した職人に仕立ててもらった靴は、他のどの靴よりも特別なものであり、

ビスポークは自分自身の探求の旅でもあります。

この本を出した一番の理由は、情熱と完璧な美しさがもたらす素晴らしい物語を紡ぎたかったから、

そしてその素晴らしさをより多くの人に知ってもらいたかったからです」とGaryさん。

 

_MG_2722-4

仕上げるのに5年の歳月を要したという同書の中で紹介されているのは、

Anthony Delos, Hidetaka Fukaya, Dimitri Gomez, G.J.Cleverley, Stefano Bemer, Benjamin Klemann,

Foster & Son, Saskia Wittmer, John lobb, Roberto Ugolini, Gaziano & Girlingの11シューメーカー。

ほとんどすべての写真をGaryさんが撮影しており、彼の写真の文章の隅々に、文化へのリスペクト、職人そして彼らの作品への愛情が感じられます。

 

そんなゲイリーさんに日本のビスポーク靴職人の魅力を訊ねると、

「日本の靴職人は、イギリス、フランス、イタリアと世界各地で学んでおり、さまざまなスタイルの靴があります。

歴史に敬意を払いながら、それを進化させてオリジナルを凌駕する素晴らしい靴を作っています。

そこが日本の職人の凄さだと思います」とのこと。

僕もまさしくそこが、ニッポンのビスポーク職人の魅力であると思います。

 

 

ちなみにこの日着ていたLiverano & Liveraoのウインドウペーンスーツは、The London LoungeのGianni Agnelli Tweedで仕立てたもの。

シャツはMystery Tailor。お気に入りのシャツ屋さんでス ミズーラしたもので、詳しいことは秘密とのことです(笑)。

タイはシンガポールのVanda Fine Clothing。

 

Gary Tok_MG_9957

スエードのダブルモンクはIl Micio。

 

Gary Tok_MG_9967時計はパネライの「Radiomir 1936 PAM 249」。

 

ビスポークの世界に足を踏み入れて間もない愛好家の方たちは、ついつい足し算しすぎてディテールを盛りがちになりますが、

Garyさんの装いは至ってシンプル、そして大変洗練されています。

生地のセレクト、色使いや素材合わせ、こなしに彼独自の美学が感じられます。

Garyさんみたいなウェルドレッサーがアジアでもっと増えれば、これからこの世界はもっともっと面白くなっていくはずです。

 

 

 

さて、気になる本の中身はこんな感じです。

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こちらは今、ベルルッティのビスポーク部門責任者にもなっているAnthony Delos。

僕も8年くらい前に彼の工房に取材に行ったことがあり、衝撃を受けたのを覚えています。

 

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こちらはFoster & Son。痺れるカッコよさです!

 

全256ページ、美しいビスポークシューズの数々は見ごたえたっぷり。

その美しさに惚れ惚れしてしまいます。

靴を愛する方たちにぜひ手にとっていただきたい一冊です。

ちなみに日本ではBryceland’sで購入できます。

 

Kenji Mihara(リシュモン ジャパン)

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  • On Mar 22nd, 2017
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三原健治(Kenji Mihara)

 

text & photography yuko fujita

MG_0052A

suit  Dunhill

shirt  Dunhill

pocket square(around on neck)  Dunhill

document case  Dunhill

shoes  Justin Deakin

bracelet  Thomas Curtis

watch  Girard-Perregaux

 

 

リシュモン ジャパンのマーチャンダイジング マネージャー、三原健治さんです。

三原さんは僕と同い年。根っからの服好きで話が本当に面白く、

「うんうん!」と頷きっぱなしで気が付いたら2時間ずーっとワクワク聞き入ってました。

三原さんは大学を卒業後、バーニーズ ジャパンに新卒で入社。

大学時代のサークルにはUAのMD部長 太田勝也さんを筆頭に今日のファッション界の第一線で活躍している

お洒落な先輩たちがゴロゴロいたそうで、周囲に感化されて高いテンションで入社したからか、

1年目に服を買いすぎて人事に呼び出されたことがあるそうです(笑)。

三原さんって僕と同じ匂いのする方だなって強烈なシンパシーを感じてしまいました

(失礼! 今なおナポリでのス ミズーラ地獄から抜け出せない僕は、もっとタチが悪いかも)。

 

 

「バーニーズに入社した当時、休日になると先輩たちがアメ横、原宿、代官山を一緒に回ってくれて、

それこそ毎週のように玉美、プロペラ、マルセルラサンスなどに通っては、買い物をしまくっていました」

ちなみに毎週の買い物行脚の際、アメ横でのランチの定番だったのは僕も大好きな中華料理屋「新東洋」。

洋服屋さんの趣味が同じなだけでなく、中華屋の趣味まで一緒ときたから、強烈なシンパシー5割増しです。

 

 

三原さんが最初に配属されたのは、ネクタイやタイを扱う新宿店のメンズファニッシング部門。

売り場ではベルヴェストやカスタンジア(懐かしい!)のスーツ、フライやボレッリのシャツ、

エドワード グリーンの靴などでバリバリに決めていたそうです。

2年目のときに「それだけ服が好きなら、服を買うのを我慢してお金を貯めて俺の海外出張に付いてこい」と

先輩に言ってもらい、三原さんはそれを本当に実行。

ピッティ ウォモやミラノ コレクションの出張に自腹で同行したというなんとも素敵なエピソードの持ち主です。

その熱意が通じたのか、3年目にしてデザイナーズブランドを扱う部門のMDチームに抜擢されます。

その後スポーツファニッシング部門のMDを経て、2007年に独立。

バーニーズ ジャパン時代の上司とともに、ニッポンのブランドを海外に発信する「アリカ」というプロジェクトに携わったのち、

2010年にリシュモンジャパンに入社し、今日に至ります。

 

 

 

ドニゴールツイード製の3ピーススーツはダンヒル。ベストは追加で同じ生地にてオーダーしたそうです。

フランネルっぽい素材感のシャツもダンヒル。

「これはイタリア製ですけどダンヒルのシャツが面白いのは、ギンガムチェックなどの一般的なチェックではなく、

タッターソールやタータン、ガンクラブ等から派生した、地域や家柄、職業に根差した英国らしいチェック地が揃っているところです」

ポケットチーフもダンヒルで、こちらはポケットに挿ささずに首に巻いているのがポイント。

「タイドアップすると必然的にドレス感の強いスタイルになるので、インディアンジュエリーをつけるときはいつもノータイです。

かといって何もしないのも寂しいので、チーフを首に巻いているんです。

これは、ダンヒルの本国スタッフの友人に教えてもらったテクニックです」

 

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靴はジャスティン・ディーキン。

「イーストロンドンにあるお店で、お店に行くとジャスティンにウイスキーを飲まされて靴を買わされます(笑)。

これはメダリオンがゴールドになっているのですが、そういう遊びの利いた靴が揃っているんです。

ちなみにシューポリッシュは、マエストロの松室真一郎さんにお願いしています」

 

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時計はお父様から譲り受けたジラール ペルゴ Ref.9050のSSケース。

「母が父にプレゼントした時計を、もうしないというので譲ってもらったものです。

今、見ると小ぶり(ケース径34㎜)かつシンプルで凄く気に入っています」

個人的にもこれ、すごくカッコいいなって、自分でも欲しくなってしまいました!

 

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そして、三原さんのこだわりが何よりも凝縮されているのが、こちらのブレスレットです。

「大変貴重なターコイズを揃えているお店が軽井沢にありまして、バーニーズにいた当時はみんなで毎月のようにそこへ行って、

ビールを飲んだ勢いでターコイズを買って帰るということを繰り返していました(笑)。

もちろん、往復のクルマの中はずっとターコイズの話です。貴重な石でも昔は今よりずっと安かったんですよね。

このブレスレットは、軽井沢で購入した石を上野のブレーブストレーディングに持っていき、

今は亡きトーマス・カーティスに作ってもらったものです。

キングマン鉱山のイサカピークのターコイズで、金っぽい色や水晶の入ったスパイダーウェブ

(クモの巣状にマトリックスの入ったもの)がお気に入りです。石の両サイドには三原の“M”を彫ってもらいました」

 

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あと、ダンヒルのドキュメントケースにも注目です。

ウォルサムストウにある自社工場製の「トラディション」というハンドクラフトシリーズのもので、

10年以上前になりますが、実は自分もここの工房を訪ねたことがあり、「サドルレザーのバッグを手掛けるファクトリーの中でも、

群を抜いて高いクオリティを誇っているなぁ!」って感動したのを覚えています。

同シリーズの鞄や革小物は、「ホーム」といわれるロンドンのボードンハウス、上海のツインヴィラ、東京の銀座本店の、

世界3店舗のみで扱っているそうです。

本当に素晴らしいクオリティの製品ですので、ぜひいちど銀座本店に足を運んで、実物をご覧になってみてください。

自分もいつかは購入したいなと思っている憧れの鞄のひとつです。

 

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ちなみにトラディションシリーズには、手掛けた職人の名前が刻印されたタグが入っています。

ここまでこだわっているブランドって、そうはないと思います。

 

 

 

そんな三原さんに自身のスタイルに対するこだわりを訊いたところ、返ってきた答えは至極明快!

“イタリア的な要素をなるべく排除すること”だそうです。

「今、皆さんカッタウェイのシャツを着ていますが、私からするとカッタウェイはよくも悪くもイタリアの匂いが強すぎるんです。

1910~20年代の映画を観ると、皆ロングポイントのレギュラーカラーシャツを着ていますし、

そこに抑制された色気を感じるんです。

それは決して古めかしいものではなく、今の自分の中ではそういうレギュラーカラーが気分なんです

着丈が短めで内に肩が入ったイタリアのトレンドであるタイトなジャケットも、自分の中では何かが違います」

 

 

以前はアメリカの『スティング』『フィラデルフィア物語』など

1930~60年代を舞台にした映画を好んで観ていたそうですが、

リシュモン ジャパンに入って英国と関わるようになってからは、

『眺めのいい部屋』『シューティングパーティ』『炎のランナー』など、

1910~20年代のイギリスにフォーカスした映画を片っ端から観て、イギリス文化に傾倒していったそうです。

「映画を通して自分の行ったことのない風景と時間と色を体験できたし、

そこから本当にたくさんのことを学べました」と三原さん。

 

 

「私がいた頃のバーニーズはアメリカ、フランス、イギリス、イタリアの要素があって凄く面白いなって思っていたんです。

それと同じような匂いがダンヒルにはあって、売れるかわからないものでもずっと展開し続けていて

ブランドの世界観を表現しています。

どのアイテムも、イギリス、イタリア、フランスと、そのジャンルにおける世界の一流の生産者が手掛けていて、

名前こそオリジナルだけど、これが本当のセレクトショップだと思うんです。

ライターがあって、パイプがあって、よほどのニッチなファンの方以外は食いつかないかもしれませんが、

時計もジャガールクルトが手掛けているし、ビスポークスーツもボードンハウスの3階で製作しています。

鞄や革小物もウォルサムストウ製のものをビスポークできて、こだわりも凄いんです」

 

 

「ブレイシーズもリシュモンに入ってから愛用するようになりました。普段は見えるものではないけれど、

ネクタイとのコーディネイトで遊ぶとすごく楽しい。

イギリス人はネイビーのスーツに赤いソックスをふつうに合わせますし、

デイヴィッド・ホックニーなんかは左右違う色のホーズを履いたりもしています。

ブレイシーズもソックスもこんなに面白いんだってことにも気づかされました。

イタリア的にはパンツと色を合わせるとか靴と色を合わせるとか、あるいは靴下は履かないのがセオリーだと思うんですけど、

イギリス的には色も素材も、そのへんの遊びが違うんです」

 

 

基本的にひとつのブランドでまとめていながらも装いに独特の空気を感じるのは、

三原さんがお話ししたようなダンヒルというブランドの立ち位置もあるだろうし、

イタリアンクラシックも、モードも、アメカジも、そしてヴィンテージもすべて通過してきた

三原さんの経験が生んだ美意識が詰まっているからだと思います。

流行をそのまま着ることを否定はしませんが、もっと大切なのは自分の気分、自分らしい装いを大切にすることです。

それが自分らしければ取り入れればいいし、自分らしくなければ、それを意識的に避けることも大切なんだなって、

三原さんの装いは気づかせてくれます。

ウェルドレッサーだと言われている人たちは、きっとそこが違うんだと思います。

 

 

3月24日に発売される『THE RAKE JAPAN』Issue16では、「THE 10 RAKISH MEN 2017」という特集を組んでいますが、

そこに登場する世界の10名も、トレンドとは適度な距離を保ちながら自分のスタイルを大切にしている素敵な紳士ばかりですよ!

Noriyuki Ueki(Sartoria Ciccio)

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  • On Nov 7th, 2016
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上木規至 Noriyuki Ueki 

Sartoria Ciccio

text & photography  Yuko Fujita

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Jacket  Ciccio

Trousers  Ciccio

Shirt Les Leston for Ciccio

Tie Sevenfold per Ciccio

Shoes   Il Micio

 

僕の数少ない飲みトモでもあるサルトリア チッチオの上木規至さんです。

 

2003年から3年間ナポリで修業された上木さんに、僕は前から勝手に妙な親近感を抱いていました。

フツウはナポリに長く住んでいたら、中身も「俺が俺が」なナポリ人と化していくものですが、

上木さんの場合ナポリ人化するどころかいつも控えめで飄々としているので、

この人は「鈍感力」に勝るからナポリで長く修業できたのかなぁと勝手に想像していたのですが……。

お酒の席で修業時代のエピソードを聞き出すと、出てくるわ出てくるわ。

当時相当な苦労をされていて、腕を磨くためにストイックな生活にずっと耐えてきたことがわかってウルウル。

以来、上木さんに対しては常にリスペクトの眼差しです。

 

 

さてさて工房で仕事をしているときの上木さんは、まるで仕立ての神様がのり移ったかのような芸術的な手捌きを見せてくれます。

単に仕事が早いだけじゃなくて所作が大変美しく、縫いひとつをとっても正確且つちゃんと甘さ & ムードがあるんですよね。

今までたくさんのサルトの仕事を見てきましたが、彼の手捌きを初めて見たときはオーラのようなものさえ感じ、

“本物のナポリ感”に惚れ惚れしてしまいました。

 

 

そんな上木さんと去年の11月、ちょうどイタリアにいる時期が重なったこともあって、ナポリで合流してサルトリアを一緒に回る機会がありました。

午前中に一緒に理髪店のBOELLISに行って髪を切ってから、サルトリア巡りをしたのはとても楽しい思い出です。

自分はこれまでナポリだけでもおそらく100を超える工房を回ってきましたが、初めてのところに行くと、今でもやっぱり胸が躍ります。

上木さんの師匠Antonio Pascariello氏は本人の風貌もさることながら、穴蔵みたいなところにあるサルトリアがまた衝撃的で、超ワクワク。

それでいてとてもきれいな服を仕立てていたので、上木さんの仕事の美しさは師匠譲りなんだなって思ったのを覚えています。

素敵な写真も撮れたので、いつか彼のこともご紹介したいところです。

 

それともうひとつワクワクしたのが、モンテサント地区のアパートに工房を構えている

とあるパンツ職人(アンブロージでもモーラでもチェッラートでもありません)。

実は去年、僕は毎朝モンテサント駅で降りてイタリア語の学校に通っていたので、

「えっ、毎日通っていた道にこんなパンツ工房があったんだ」って、かなりのサプライズでした。

本来、街のどこにでも一流の仕立て職人がいるのがナポリなので、驚くべきことでもないのですが。

 

ちなみにモンテサントはこんな感じのところです(YouTubeから拝借)。

ピーニャセッカの市場は野菜も果物も新鮮な魚介もとにかく安いし、レストランもバリバリの下町価格。

ちなみにピッツェリアだったらDa Attilio、トラットリアだったらLa Taverna del Buongustaioが下町風情全開のディープな食堂でオススメです。

トレド通りにぶつかるCeraldi Caffè のエスプレッソはナポリでいちばん好きかも!

 

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と、話が脱線しちゃいましたが、本題です。

 

今回の撮影時に上木さんが穿いていたチッチオのトラウザーズは、実はナポリ製のプレタポルテなんです。

正確には型紙と裁断までを上木さんが手掛け、それをナポリに送って、先のモンテサントのパンタロナイオが縫製しています。

(10月からスタートしたばかりで、11月24日に発売されるTHE RAKEのISSUE13でもご紹介しています)

 

ここのメインの職人さんはおじいちゃん2人。

かつてはアントニオ パニコのトラウザーズを請け負っていただけに、腕はめっちゃブラーヴォです。

ただ、ナポリのこの手のハンドメイドトラウザーズって、日本に仕入れるとどうしても個々の製品のばらつき問題が生じてしまうので、

サルトが常駐していないセレクトショップで扱うのはちょっと難しいんですよね。

でもチッチオのトラウザーズは裁断までを上木さんが手掛けているからバラつきが少ないし、

フィッティングしたうえで補正するのが前提なので、そういった問題はすべて解決してくれます。

ちなみに納期は約10日ほど。

生地は全3種で、グレーフランネル(チャコールとミディアム)が¥79,000、ベージュのコットンツイルが¥74,000です。

ちなみに僕はちょうど上木さんにオーダー中のツイードのジャケットに合う、グレーフランネルのトラウザーズを購入しました。

 

今までのナポリのトラウザーズって、作り手の主張が色濃く反映されているものがほとんどでしたが、

こちらのトラウザーズは極力主張を抑えた作りになっています。

正確にいうと、この洗練されたスタイルこそが上木さんの美意識でもあるのですが。

極端にテーパードさせることもなく、股上はやや深めのクラシックタイプで、全体的なシルエットも限りなく中庸。

ディテールもシンプル化が徹底されています。

いろいろオーダーを経験されてきて「やっぱり最高のフツウがいいよね」という結論をお持ちの方たちには、

チッチオのナポリ製トラウザーズは最上の選択と言えるのではないでしょうか(最高のフツウって探すとなかなかないんですよね)。

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そういえば、上木さんのこんな言葉がすごく印象に残りました。

「自分はナポリで3年間修業をしてきて、いろいろな職人さんからたくさんのことを学ばせてもらいました。

ここ数年、ナポリの仕立てが世界的に注目されるようになって、名の知られたサルトは裕福な生活を送れるようになりましたが、

下請けの職人さんは昔とさほど変わらない生活をしています。自分が彼らに少しでも恩返しをできたらなと思ったのが、

彼らと取り組みを始めたきっかけです」

 

 

サルトリア仕立ての文化を、国の垣根を超え、お互いが協力しあって継承していくのって本当に素晴らしいことだと思います。

ここのトラウザーズ工房でもパチパチ撮ってきたので、機会を改めていつかご紹介できればと思います。

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Kenji Cheung(Bryceland’s Co)

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  • On May 17th, 2016
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Kenji Cheung(Bryceland’s Co)
張 振威

text & photography  Yuko Fujita

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Suit  Dalcuore for Brycleland’s

 

Shirt  Ascot Chang for Bryceland’s

 

Tie  Sevenfold for Bryceland’s

 

Boots  Saint Crispin’s for Bryceland’s

 

Glasses  Retro Specs

 

 

注目のショップBryceland’s Coの共同設立者でもある香港のKenji Cheung(張 振威)さんです。

The Rake Japanのブログを書いてくれているEthan Newtonさんのビジネスパートナーで、

今、アジアの中で個人的に最もカッコいいと思っている友人のひとりです。

香港最大のデンタル サプライヤーTesco Dental Ltd.のCEOでもあります。

 

3ピーススーツはダルクオーレ。

Bryceland’sの完全別注によるモデルです。

自分は昨年、ナポリのダルクオーレの工房から徒歩10分のところに住んでいたので

よく遊びに行っていたのですが、ここまでスタイルを変えた彼らの服は初めて見ました。

Bryceland’sのスタイルをダルクオーレの技術で表現した、といったほうがしっくりくるのかな?

 

ややドロップしたショルダーラインや、下がり気味にカーブしたゴージの角度、

カッタウェイのフロント、ハイウエストのトラウザーズ等、どれも男らしくて最高にカッコいいですね。

このスタイルに、ヘビーウェイトのサージがとてもよくマッチしています。

 

 

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ラウンドのタブカラーシャツは香港のアスコット チャン。

とても評判がいいので、自分も試してみたいシャツのひとつです。

 

ネクタイは加賀健二さんのセブンフォールド社に別注した三つ巻仕様。

ノットをキュッと小さく結んで、でも軽やかな雰囲気もあって、これがとてもカッコいいですね。

セブンフォールドは、個人的に最も好きなブランドのひとつです。

 

 

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足元はSaint Crispin’sの内羽根式外鳩目のレースアップブーツ。

ここはコレクションの幅が大変広く、その中からどれを抜くか、どうモディファイするかで

印象がガラリと変わるので、ある意味バイヤーの感性が最も問われる靴ブランドなんですよね。

 

その点、Bryceland’sのセレクトはヴィンテージ感たっぷりな写真の別注モデルを筆頭に、

どれも最高にいいところを突いているように思います。

往年の紳士よろしく、ドレッシーなレースアップブーツをスーツに合わせるのはとても新鮮ですね!

 

メガネはRetro Specsの50 年代製ヴィンテージで、Shuronのフレーム。

14歳から集め出して300本以上所有(うちヴィンテージは約100本)しているそうです。

 

「自分にとって服はパーソナリティを表すものであり、トレンドを追って着るものではありません。

私が長い年月を経ても価値が褪せないヴィンテージに魅力を感じるのもそれが理由ですし、

これからヴィンテージとなり得るような普遍的な価値をもった服にこそ魅力を感じるんです。

それを表現しているのがBryceland’sです。

トレンドを追った過去の服は、友人にあげるなどして半年前にすべて手放しました」

 

この潔さが、これだけカッコいい彼の今のスタイルを生み出しているのだと思います。

 

 

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この日はウォルサムのポケットウォッチをつけていて腕時計はしていませんでしたが、

Kenjiさんはヴィンテージロレックスを25本ほど所有するロレックスマニア。

デイトナは2本のポール・ニューマン(6241と6263)を愛用しているほか、

最近はバブルバックに凝っていて、こちらも5-6本所有しているそうです。

 

ちなみに愛車は991GT3、Macan S、M3とのこと。

 

 

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そして、Kenjiさんのスタイルを決定づけるのが、インディアンジュエリー。

すべてナバホのもので、タイクリップは50年代(1,2枚目の写真)、リングは20年代(左手)と30年代(右手)、

ブレスレットは1910~20年代と、垂涎もののオンパレード!

 

「ナバホのアクセサリーは10点ほど所有しています。

アメリカのマニアの友人に探してもらったり、香港や原宿のRRL、

東京に来た際に何軒も回って探しているのですが、

サイズもあるのでなかなか最高のものに出会えないんです。

だから、出逢えたジュエリーには運命的なものを感じます」

 

僕が知っているアジアの友人たちは皆本当に服が大好きで、目を輝かせながら話してくれるので、

ワクワクがこっちまで伝わってきていつもとても楽しくなってしまうのですが、Kenjiさんはその最たる例。

 

「これ、今回見つけたんだよ~。50年代製かなぁ。カッコいいでしょ? ちょっと着てみて!」

 

会うといつもこんな感じです。そしてお互い情報交換。

といっても僕より全然詳しいので、教えてもらうことのほうが多いですが(笑)。

 

Kenjiさんはオフのヴィンテージスタイルも最高にカッコいいので、

機会があったらまたご紹介したいと思います。