Friday, August 17th, 2018

TIME STYLIST
お洒落の天才マーク・チョーという現象

かつてメンズスタイルといえばイタリア、イギリス、アメリカに分類されていた。
だが、マーク・チョーの登場以来、メンズファッション業界に国境はない。
クラシコイタリア、モダンブリティッシュ、アメリカンアイビーを自在にミックス、
さらに日本のクラフツマンシップをも見いだした彼のスタイルはどこから生まれたのか。
text yoshimi hasegawa photography ken wu@lightseed studio

MARK & HIS WATCHES
マーク・チョーに学ぶ時計とファッションの合わせ方
時計のコレクターとしても知られるマークだが、その蒐集の哲学はファッション同様、独自の世界観を持っている。
いかにファッションと時計を組み合わせるか、時計への愛情とシーン毎に合わせたコーディネイトを語る。

この日着用したのは1960年代のグランドセイコー3180、ゴールドプレートケース。グランドセイコーの名でセイコーが発表した最初の記念すべきモデル。セイコーに勤めている時計師で、香港のアーモリーの顧客から、この時計を譲り受けた。

GRAND SEIKO/グランドセイコー
1960年、世界最高級の腕時計作りを目指しセイコーが設立。1999年開発のスプリングドライブは機械式時計とクオーツ式時計の技術を融合した第三のムーブメントとしてその技術を世界に知らしめた。

グランドセイコーのコレクション。常に入れ替わっているのでこれはその一部となる。一番右がグランドセイコーの価値を初めて認識させたラッキーウォッチ、ミュージアムピースのGRAND SEIKO 61GS。

端正なドレスウォッチとスーツの個性が共鳴する

 英国人は言う。男にとって唯一許されたアクセサリーが時計なのだと。
 インタビューの最初に、マークはそれについてどう思うか、訊いてみる。
「その意見には賛成だ。時計は男にとって数少ない遊べるピース。自分にとって時計は洋服や靴と同様、スタイルの一部のような存在だと思う。コレクターと呼ばれる人々は得てしてシリアスになり過ぎていると感じる。一方で時計を購入することを投資として考えていて、また一方ではムーブメントの良し悪しを討論する。正直言って、時計を作るプロフェッショナルでない限り、ムーブメントの良し悪しがどれだけわかるんだろう。実際はわからないんじゃないかな」と笑う。
 彼のコレクションはグランドセイコーからカルティエにロレックス、F.P.ジュルヌにオーデマ ピゲ、ヴァシュロン・コンスタンタンとバラエティに富んでいる。その選択の基準は何なのだろう。
「デザインが面白いというのもひとつの要素だが、例えばF.P.ジュルヌのレゾナンス(ふたつの脱進調速機の共振現象を生かしたクロノメーターを搭載)やグランドセイコーのスプリングドライブといった、特にその時代を代表する画期的なアイデアや構造を持つ時計に惹かれるんだ」
 彼がレストランでのビジネスランチというシーンに合わせて選んだのも1960年代に製造されたグランドセイコーだ。
「目につくような派手なデザインではないが、ダイヤルやハンドルのデザインはパテック フィリップのカラトラバから、ケースはオメガから影響を受けていて、全体が時計として美しい。ドレスウォッチとして常に愛用しているお気に入りのひとつなんだ。このグランドセイコー 3180はセイコー、さらに日本の時計製造業にとって分岐点となったモデル。スイス製が最高峰だった時代に同レベルの技術力を証明した。セイコーに限らず、日本のものづくりを評価しているのは自分の労力を厭わず、いかにクオリティを上げられるかを考えているところ。この時計はそのいい例だと思う」
 気になった時計があると、購入前に、まずその時計のことをリサーチする。東京のセイコーミュージアムにも足を運んだ。今までスーツや靴など日本の職人技を高く評価し、世界へ紹介してきた。グランドセイコーも日本のモノ作りの哲学と共に、その真価が世界に再認識されている。
THE RAKE JAPAN EDITION issue 23
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