October 2018

THE HERMÈS EFFECT

エルメスのシルク王国へようこそ

text benedict browne
photography kim lang

重ねられたネクタイの内側の芯地と裏地のパネル。エルメスのタイは、繊細かつ複雑な構造をしている。

 パリにあるオフィスでそう話すのは、エルメス メンズシルクのクリエイティブ・ディレクター、クリストフ・ ゴワノー氏だ。彼はこう続ける。

「エルメスはクオリティに強いこだわりを持つ企業です。われわれの品は相当に高価ですが、高く売ることを目論んでいるわけではありません。最上のものを追求した結果、こうなっただけなのです」

 この言葉には真実味があり、客観的状況もそれを裏付けている。エルメスはラグジュアリー業界の頂点に立っており、巨大複合企業にありがちな上からの圧力とは無縁だ。ティエリ・エルメスが1837年に創業して以来、ファミリー企業であり続けている。現在の最高経営責任者も、エルメス一族の6世代目にあたるアクセル・デュマ氏が務めている。

 ゴワノー氏は、アーティスティック・ディレクターであるヴェロニク・ニシャニアンのメンズ部門からは独立した、メンズシルク部門を監督する立場にある。

「ヴェロニクとは、お互いにさまざまなやり取りをしています。デザインやパターンについて、いつも話し合っています」とゴワノー氏。

フィニッシングルームにて、タイの生地をカットしているところ。

折られたネクタイを縫い合わせて仕上げる縫製職人。ネクタイ作りの肝要な部分だ。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 22
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