June 2017

THE GOOD, THE BAD AND IL BRUTTO

チャールズ・ブロンソン:
“卑劣漢”に秘められた失望

チャールズ・ブロンソンといえば、タフガイの典型的なイメージや、情け容赦ないキャラクター、
戦い疲れた兵士のような虚ろな目つきを思い出す人が多いだろう。
だが彼は機会さえ与えられれば、ほろ苦いロマンチシズムを表現することができた。
text stuart husband

『荒野の七人』(1960年)でのチャールズ・ブロンソン。

「自分のイメージ、声、何もかもが嫌い。子供の頃に想像していたような大人じゃない。心底がっかりしているよ」

 1975年、ロサンゼルス・タイムズ紙のインタビューで、チャールズ・ブロンソンはこう明かした。俳優がこんな告白をするのは珍しいことだ。当時のブロンソンは、世界一の人気とギャラを誇るトップスターだった。その人気を支えていたのは、武骨で荒々しく冷酷なイメージである。

 例えば1974年の『狼よさらば』では、正義の執行者と化すニューヨークの建築技師として、妻を殺し、娘を暴行した犯人たちをターミネーターのような非情さでどこまでも追い詰める役を演じた。こうした役柄により、彼はイタリアでは“Il brutto(卑劣漢)”、フランスでは“le sacre monstre(聖なる悪党)”と呼ばれるようになった。

 しかし、ブロンソンは決まりきった役ばかり与えられることに苛立ち、よりやりがいのある機会を待ち望んでいたようだ。そうした機会に恵まれないとき、彼は自分の世界に引きこもって用心深く世の中を見ていた。嘆き節を口にしたかと思えば、少年時代の非行、暴行による逮捕歴、暇な時間にナイフ投げをする趣味などを得意げに主張したという。

 ところが、取材記者たちが調査しても、逮捕歴や告訴された事実は見つからなかった。それどころか、彼の趣味がナイフを投げることではなく、絵を描くことだと発見することになった。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 14
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