February 2018

REEL BRITANNIA

ハリウッドを占拠した英国人俳優

text james medd

レックス・ハリソンと妻ケイ・ケンドール(1959年)

イギリス人俳優たちへの帰国キャンペーン 個々の功績がどうであれ、この支配がとりわけ一時的なものだと彼らは気づくべきであった。

 1939年、イギリスが第二次世界大戦に乗り出す頃にはすでに、イギリス人はアメリカ国民の心理を支配できなくなっていた。そしてそれを見計らうかのように、イギリスのマスコミが邪魔をし始めた。その年、偉大なアメリカ人主人公スカーレット・オハラ役を演じたヴィヴィアン・リーの大成功を意地悪に引用し、Gone with the wind(風と共に去りぬ)ならぬGone with the wind up(風と共に終わりにしよう)というイギリス人俳優たちを辱めて帰国させるという、見当違いなキャンペーンに乗り出したのだ。

 さらに時を同じくして、ほとんどの軍隊の入隊時期が迫っていた。愛国心の強い老人たちは、自分たちの義務を果たすべきだとさらに煽ったのである。

 こうしてほぼ全員が帰国したが、彼らが目にしたのは母国の変わり果てた姿であった。戦争の打ち砕かれるような現実に、ハリウッドは真のイギリスを見たのである。

 その後のハリウッドでは、次々と作り出されたヴィクトリア調の映画の評判は悪く、時代遅れとなり、『Upstairs Downstairs(原題)』『華麗なる貴族』『ダウントン・アビー』などの人気テレビ番組へと俳優たちはシフトしていった。ケーリー・グラントなどのハリウッドに残ったイギリス人俳優たちは、ついにはアメリカ人と見分けがつかなくなり、エリザベス・テイラーを主導とした、ハリウッド育ちで劇場にも足を踏み入れたことのないような、新しい世代に取って代わっていった。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 09
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