February 2018

REEL BRITANNIA

ハリウッドを占拠した英国人俳優

ハリウッド・ヒルズで開かれるお茶会、サンセット大通りに鳴り響くクリケットの音……。
現在のアメリカにおけるイギリス人俳優ブームも、1920年代の全盛期には及ばないだろう。
当時、ハリウッドはイギリスに夢中であり、イギリス人俳優たちは、ツイード、執事、パイプ煙草をもって、
カリフォルニアの一角をやや凝りすぎた英領ハリウッドに変えたのだ。
text james medd

『The Statue(原題)』のワンシーンから。デヴィッド・ニーヴンを囲む半裸のダンサーたち(1971年)

 ハリウッドは英国人を好む。英国出身の主演俳優たちが映画界を席巻しているのだ。オスカー受賞者に目をやれば一目瞭然だろう。エディ・レッドメイン、ベネディクト・カンバーバッチ、そしてトム・ハーディやトム・ヒドルストンら、名だたる面々が揃っている。さらにアメリカ人は、自国の大統領(ダニエル・デイ=ルイス演じるエイブラハム・リンカーン)、革命家(デヴィッド・オイェロウォ演じるマーティン・ルーサー・キング・ジュニア)、そしてスーパーヒーローまでをもイギリス人に演じさせる。

 バットマン(クリスチャン・ベール)、スーパーマン(ヘンリー・カヴィル)、スパイダーマン(アンドリュー・ガーフィールド)など、彼らは皆バーガンディ色のパスポートを持った英国民なのだ。今やキャリー・マリガン、キーラ・ナイトレイ、エミリー・ブラントらを筆頭にイギリス人女優たちも数多く存在する。

 しかしここまではまだテレビ業界を除いての話。アメリカ人俳優が窮地に立たされていることなどお構いなしに、イギリス人俳優への執着はテレビドラマにまで及んでいるのだ。

『HOMELAND /ホームランド』では、名門パブリックスクール出身のダミアン・ルイスが海兵隊員、ルパート・フレンドがシークレット・サービスを演じ、『ウォーキング・デッド』では、英国王立演劇学校卒業生であるアンドリュー・リンカーンがゾンビに立ち向かい、『ザ・ワイヤー』ではハックニー区出身のイドリス・エルバが麻薬組織の幹部を演じたことからも明らかだろう。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 09
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