February 2018

RAKES OF RIVIERA

リヴィエラの道楽者たち

text nick foulkes

ルビロサと最後の妻となったフランス人女優オディール・ロダン

誰よりも絶倫だった色男

 あるときは外交官としてラファエル・トルヒーヨ(ドミニカ共和国を私物化した独裁者)政権の顔となったこともあるルビロサは、国際政治や外交のささいなことには関心がなかった。彼は自らの若い頃をざっくばらんにこう語っている。

「私が興味を持ったのはスポーツ、女性、冒険、セレブだけ。そんな暮らしだった」

 ルビの「夜の外交」はトゥールダルジャンでのディナーに始まり、ナイトクラブへと続く。彼は「ニュージミーズ」(フランス人シンガーのレジーヌ・ジルベルベルグが経営するクラブ)や「カステル」(セーヌ左岸の有名店)の常連だった。

 夜明けが近づくと、残った面々を連れてモンテーニュ通りのカフェ「カルヴァドス」に行き、ソーセージとビールの朝食で長い夜を締めくくる。そして、フェラーリ250GTカブリオレで颯爽と家路につく。

 ルビは稀代の色男で、大変立派なペニスを持っていることでも知られていた。彼は自分の能力や才能を誇りに思っており、ちょっとした技を披露することもあった。電話帳を乗せた椅子をそそり立った一物で支えながら、「ここは他の筋肉と同じように鍛えることができるのさ」と語っていたらしい。

 「ジェットセッター世代のプルースト」を自認するトルーマン・カポーティは、『叶えられた祈り』(国際的な社交界を描いた未完の実話小説)で、「浅黒いジュニアは長さが11インチもあるカフェオレ色の重りのようで、男性の手首ほどの太さがあったらしい」と称えている。

「絶倫、疲れ知らず、グロテスクなサイズ」と評したのは、5回結婚したルビロサの妻のひとり、バーバラ・ハットン。ドリス・デュークの表現はもっとリリカルだった。「これまで見たなかで最も巨大なペニス」とドリスは懐かしそうに、名づけ子のポニー・デュークに語ったそうだ。

 ドリスとバーバラは当代きっての裕福な女性相続人、つまりルビのような凄腕の夫にふさわしい大物だった。『007』シリーズのリッピ伯爵が女性の財産で贅沢な暮らしを楽しみ、スミレ色のベントレーやゴージャスな装いをひけらかすなら、ルビがドリスやバーバラと結婚していたときの暮らしぶりを描写するには最上級の表現がふんだんに必要だろう。

 ふたりのミセス・ルビロサは夫にプレゼントや多額の現金を惜しみなく与えた。ドリスからは改造したB-25爆撃機までプレゼントされたが、彼はそれを壊してしまった。バーバラとの結婚生活は1954年初頭の数週間しか続かなかったが、幸いにも、すさまじいプレゼント攻勢には十分な期間だった。彼はドミニカ共和国のシバオバレーにあるコーヒー農園に加えて、前に壊してしまったものよりはるかに豪華なB-25も受け取った。

 もっとも、ルビロサを単なるジゴロ、驚異の肉体を誇る色男と捉えてしまうと、彼の圧倒的な魅力を見逃すことになる。バーバラ・ハットンの言葉を借りれば、「彼は、なんでもない晩を夢のような夜に変えてくれる究極の魔術師」だったという。その魅力こそが、彼と「世紀のプレイボーイ」のタイトルを争っていた最大のライバル、アリ・カーンとの共通点だった。

ハネムーン先でのルビロサと3番目の妻ドリス・デューク(1947年)

THE RAKE JAPAN EDITION issue 10
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