Thursday, September 6th, 2018

LUCA CORDERO DI MONTEZEMOLO
世界一の洒落者、そのワードローブとは?

text miki takana photography alberto zanetti

Luca Cordero di Montezemolo
ルカ・コルデーロ・ディ・モンテゼーモロ

1947年生まれ。ボローニャ出身。ローマ大学、米・コロンビア大学で学んだ後、フェラーリのマネージャーに。フィアット関連会社の社長等を務めた後、91年にフェラーリ社長となり同社を再建。イタリア産業総連盟の会長を経て、2004年よりフィアット会長。2014年同グループを去り、アリタリア航空会長に。ローマオリンピック招致委員会のトップも務める。

ジャンニ・カンパーニャのネイビージャケットを軸にグレイのパンツとネクタイを合わせ、ビジネスミーティングを想定した抑えめのジャケパンスタイル。モンテゼーモロ氏の十八番、ボタンダウンシャツのボタンはずしも健在。ポップアートを愛する氏のお気に入り、ジム・ダインの絵の前で。

書斎にはミケランジェロ・ピストレットが氏のために作った、若き日のフェラーリ時代の写真を貼り付けた壁一面のミラーが。モンテゼーモロ氏にとってフェラーリは彼の生涯そのものであること、そして変わることのない深い愛が、自宅にあるさまざまなフェラーリ所縁の品から感じられる。

イタリアが愛する世界一お洒落な実業家
まるで魔術師のように不振の会社の数々を復興させてきた男。
実業家でありながら、常にショービズ界のスター並みに追いかけられる男。
 ルカ・コルデーロ・ディ・モンテゼーモロ……イタリアで彼を知らない人はいないだろう。その知名度といえばテレビタレントやサッカー選手並みだ。とはいっても、実際のところは所詮、一企業の会長(“所詮”という言い方は失礼だが、顔で売っているショービズ界の人でもないのに、という意味で)。例えば日本の航空会社の会長の名前や顔を日本人みんなが知っているなどということはあり得ないわけで、彼はそれだけイタリア人にとって特別な存在なのだ。
 それはモンテゼーモロ氏がイケメンで洒落者だという外見の美しさや若い頃のゴシップも手伝ってはいるだろうが、彼がこれまで有名大企業を再建してきた手腕と、たとえ直接会ったことはなくてもメディアを通して感じるカリスマ性や人間的な温かさと真摯な姿勢を、大衆が感じているからではないだろうか。出口の見えない長い経済不況が続くイタリアで、モンテゼーモロ氏のようなカリスマ的かつ実直な真の実業家の活躍は、国民のわずかな希望の光なのかもしれない。
 さて、彼のキャリアの大部分を占め、その知名度をここまでにしたのはやはり、本人自身も「自分の人生において2度の大きな苦難」と言うほどの困難期にあったフェラーリおよびフィアットを再建した功績によるものが大きい。そもそもモンテゼーモロ氏がフェラーリに関わったのは、ローマ大学時代にラリーをやっていたことがきっかけでエンツォ・フェラーリのアシスタントとして、1973年にF1のスクーデリア・フェラーリの責任者となったことに始まる。伝説のドライバー、ニキ・ラウダとチームを勝利に招き、3年連続でチームに優勝をもたらした。
 その後、フェラーリをいったん離れ、フィアット関連会社の社長やアメリカズカップやサッカーのワールドカップの運営責任者などを務めるが、再び不振に陥ったフェラーリの再興のために、1991年に会長兼CEOとして同社に復活する。フェラーリを立て直した後には、2004年に不振期にあったフィアットの会長に就任し、2014年の退任まで経営の立て直しを行った。
 魔法使いのように大企業を軒並みメンテナンスしてきた、その秘密はどこにあるのか? モンテゼーモロ氏は迷うことなく、さも簡単そうに言う。
「実業家に求められるものは5つ。パッション。自分より優秀な人材の発掘。そんな人材を周りに置く。その仲間とチームスピリットを持つ。そしてクリアな目標を掲げること、です」
 そしてこれらのキーワードを補足するかのようにこんなふうにも語った。
「これらの会社の危機を立て直すのはとても大変なことで、そのために当時は土日も働いていました。パッションがあったからできたことです。そして、一人ではとてもやり遂げられないことでしたから、優秀で正しい人材を見つけてきて適材適所に配置することでその力を発揮してもらいました。自分は指導者として、自分たちが今置かれている状況を分析して、やるべきことのプライオリティを重視しつつクリアに目的を立て、それを進めていったのです」
 息を吹き返したもうひとつの斜陽企業そんなモンテゼーモロ氏は、今またアリタリア航空において再建劇を仕掛けている。一時は倒産寸前状態にまで経営が悪化し、買収や支援の話もなかなか決まらなかったアリタリア航空が、現在全世界に快調に航路を広げている。
「私は自分が最初のクライアントであることを常に想定しています。今までもまずは私が欲しいものを作ってきました。それは、私が納得するものは顧客も納得してくれると信じているから。アリタリア航空の乗客に対しても同じ。私の家にお客様が来てくださったらもちろん大切に扱います。それと同じような気持ちで乗客をもてなすべきだと思っています」
 モンテゼーモロ氏のもとで、そのサービスは劇的に向上したのだ。
THE RAKE JAPAN EDITION issue 09
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