Tuesday, November 8th, 2016

LEGENDARY SCOTCH WHISKIES
幻のウイスキーを訪ねる旅

ラグジュアリーでクールなスピリッツとして、今、世界中でウイスキー熱がヒートアップしている。
特に注目が集まっているのは、風土や造り手のこだわりで大きな個性が生まれるシングルモルトだろう。
幻と呼ばれるシングルモルトとその原点を探して、スコットランドの蒸留所を訪ねた。
text yuka hasegawa photography kumi saito
Issue07_P170_01

海抜ゼロメートル以下に位置する、ボウモアモルトの中枢ともいえる「第1貯蔵庫」内で、16年熟成中の樽からサンプルを取り出すエディ・マカフィー氏。風格をたたえ静かに眠る樽など、230年前に建てられたという貯蔵庫内には時間を超越した空気感が満ち溢れている。

BOWMORE, Islay
海からの恵みが育む、アイラの芸術品

アイラ島最古の蒸留所であり、ライトなスモーキーさとかすかな海の香りを持つ、気品溢れる味わいで名高いボウモア。アイラモルト・ファン垂涎の原酒が眠る、伝説の貯蔵庫を訪ねた。

 ボウモアの創立は1779年。アイラ島最古のこの蒸留所に一歩足を踏み入れると、ボウモアがなぜ“アイラの女王”として世界的な称賛を受けるのか納得するに違いない。そこには時代を超えて頑なに継承される、いぶし銀のようなクラフトマンシップが至る所に宿っている。「フロアモルティングは、ボウモアのモルトにとって根幹と言える製造工程です。大麦を床に広げ、麦の発芽が均等に行われるように、4時間毎に丸6日間大麦を撹拌するというハードな作業」と語るのは、長い間蒸留所 所長を務め、現在はマスター・ディスティラーとしてアンバサダー的仕事をするエディ・マカフィー氏。また麦汁の発酵においても、近代的なステンレスではなく、オレゴン・パインで作られた木製を使用することで、豊かな香味成分を最大限に引き出しているという。

ボウモアの精霊が宿る、第1貯蔵庫
 蒸留を終えた原酒は厳選された樽に移され長い眠りにつく。なかでも伝説と言われるのが海抜ゼロメートルに位置する「第1貯蔵庫」だ。静謐で研ぎ澄まされた独特の空気感が漂うこの倉庫は、ボウモアにとって神聖な場所だという。「年間を通して肌寒くジメジメしていて、熟成に理想の場所。常に潮風が入り、海が荒れると水しぶきが壁を強くたたく。それによって原酒は磯の香りを含んで熟成されます」とマカフィー氏。伝統を守り手間暇かけてつくられたモルトは、後に海の自然の恵みに身を委ね、そしてその何十年か後には極上の銘酒にその姿をかえていく。
 最後に氏にお気に入りの1本を聞くと、「1995年に蒸留された、ボウモア40年。熟成を経てピートやスモーキーさは薄れ、フルーツカクテルのようなフレーバー。今でも心に残る1本です」。クオリティーが高い原酒は、長い熟成を経てこそ底力を発揮する。ボウモア40年は、間違いなくそのような銘酒なのだろう。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 07
1 2 3 4 5 6 7 8 9