February 2018

La Vida Bella

秘密の楽園、マルベーリャ

text nick foulkes

スイミングプールの傍らを流れる静かな時間(1960年代頃)

給仕係以外は全員爵位持ち 1967年の夏には、貴族や大富豪、スターたちが雪崩のように押し寄せた。バルセロナ伯爵フアン・デ・ボルボンも、沖にヨットを係留し、王政主義を掲げる同胞らの訪問を受けていた。しかし、マルベーリャは皆が楽しめるよう、政治を持ち込まない場所でもあった。

 ランフランコ・ラスポーニの著書『The Golden Oases(原題)』には、マルベーリャで羽を伸ばした富豪の話がこれでもかと言わんばかりに登場する。

「メル・ファーラー夫妻(妻はオードリー・ヘップバーン)、ピーター・ヴィアテル夫妻(妻はデボラ・カー)、アルトゥール・ルービンシュタイン夫妻が、今では同地にバンガローを所有している。(中略)シャーロット・フォード・ニアルコス、ジャクリーン・ド・リブといった人々と鉢合わせすることもある。ジェラルド・ブレナン、レルマ公爵夫妻といった多彩な顔ぶれが、近くに家を所有している」

 こうした大物の名前は、数え上げればきりがないほどだ。侯爵、公爵、大公、公爵夫人、伯爵、伯爵夫人、王子、王女ばかりが揃っていた。当時、そんな人々に囲まれて華やかな移住生活を送っていたある人物は、「給仕係とアメリカ人以外は全員が爵位持ちだ」と冗談を飛ばした。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 11
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