Saturday, April 21st, 2018

Gottcha
最後のドン、ジョン・ゴッティ

大衆のヒーロー、そして極悪非道なマフィア。ジョン・ゴッティにはさまざまな顔があった。
とびきりの洒落者としても知られ、仕立てのいいスーツに、手描きのフローラル・シルクタイを合わせていた。
しかし、暴力的で、傲岸不遜なアウトローは、最終的にはマフィアそのものをつぶしてしまったのだ。
text james medd

 アメリカで近々封切られる話題作に、ジョン・トラボルタ主演の映画『Gotti』がある。この作品の主人公は“ラスト・ドン”と呼ばれたジョン・ゴッティである。彼は1986年から92年までガンビーノ一家のボスとして、アメリカ最強のマフィア組織を牛耳っていた。ヤミ金、賭博、恐喝、強奪などの稼業から、年間数億ドルもの利益を得ていた。
 アメリカンドリームのダークサイドにいながら、ゴッティは国民的な人気を誇るアウトローでもあった。ニューヨークが犯罪のメッカだった頃、ジュリアーニ市長がマフィアの掃討作戦を行う前までは、ゴッティは大衆のヒーローだった。
 彼の生き様は、以前からさまざまな作品で描かれてきた。『ゴッドファーザーPART III』(1990年)に出てくるジョーイ・ザザは彼がモデルといわれている。ヒップホップ・スターは彼に憧れ、今号のP38に登場するノトーリアス・B.I.G.やドクター・ドレー、ジェイ・Z、50セントがゴッティの名を引き合いに出していた。
 彼は5年にわたってニューヨークに君臨したが、マフィアのボスという存在を過去の遺物にしたのも、また彼だった。

とびきりの洒落者

 絶頂期のジョン・ゴッティはニューヨーカーに大人気で、彼が第1面に登場した新聞は完売したという。彼の事件を担当したFBI捜査官のブルース・モウによれば、ゴッティは「メディアに露出した最初のドン」だった。彼はマフィアのボスらしいイメージを演出した。ライバルが地下に潜り、ひそかに活動しているときに、ボディガードたちを引き連れ、ニューヨークの街を肩で風を切って歩き、ドアも子分に開けさせていた。
 彼ほどおおっぴらに自らの稼業をアピールしたボスは、アル・カポネ以来いなかった。尾行する警察官や捜査官をあからさまにからかい、通り過ぎながら手を振ったり、子分にコーヒーを持って行かせたりしていた。こうした傲岸不遜な態度にもかかわらず、なかなか捕まらないため、“テフロン・ドン(コーティング素材のように傷のつかないドンの意)”というニックネームもついた。
 若い世代のマフィアが着るようなカジュアルウェアを認めず、富と権力を誇示する装いを好んだゴッティを、“ダッパー・ドン(粋なドン)”と呼ぶ者もいた。
 彼が好んだのは、由緒正しいテーラーだった。ブリオーニがお気に入りで、2千ドルのビスポーク・スーツに、手描きのフローラル・シルクタイとポケットチーフをコーディネイト。その上にキャメルのコートを羽織り、カシミアのスカーフを合わせていた。靴はハンドメイドで、ソックスはイニシャル入りだった。
 ヘアスタイルにも手は抜かない。毎日、シルバーの髪を80年代風のふんわりした髪型に整えるため、事務所に理髪店の椅子を置いていた。カット、シャンプー、ブローをしながらマニキュアを施してもらうと、子分がアイロンを掛けたばかりのスーツに着替える。彼はこうしたスタイルを部下にも求めた。“カッコいい”というだけの理由で、4人のヒットマンにお揃いのトレンチコートを着せ、毛皮の帽子をかぶらせて送り出したこともある。
 ライフスタイルもまた豪勢だった。運転手のローテーションを組んで、メルセデスやリンカーンで送り迎えさせた。ブルックリンに大型の高速ボートも持っていた。タオルミーナやSPQRといったマンハッタンの一流レストランの常連で、いつも子分を従えて出かけた。彼はレジーヌズ(有名なナイトクラブ)で金をばらまき、ピアニストがお気に入りの曲『愛は翼に乗って』を演奏したときは、特に気前が良かった。
 ニューヨークのドンという伝説的なイメージを印象づけるために、クイーンズで街ぐるみの慈善パーティを企画し、出身地ブルックリンの病院にも惜しみなく寄付した。その見返りとして、自らの名を入れた額をロビーに飾らせたのは言うまでもない。「世間の評判が気になりますか?」と聞かれたゴッティは、「いやいや、みんな私のファンなんだ。私のことが大好きなのさ」と答えたという。
 ロビン・フッドのように民衆から愛されているという彼の認識は、あながち間違いではなかった。恐喝の容疑で起訴されたゴッティが無罪放免になったときは、地元の人々が自宅周辺の木々に黄色いリボンを結んで歓迎してくれたのだ。

グレイフランネルのダブルスーツで決めた完璧な装いで、恐喝罪の裁判に臨む“ダッパー・ドン”ことジョン・ゴッティ(1986 年)

ジョン・ゴッティのマグショット(逮捕後に撮影される顔写真、1968 年)

THE RAKE JAPAN EDITION issue 19
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