Thursday, June 15th, 2017

COOL MUTHA FUQUA
クロサワのDNAに忠実な鬼才

クロサワのDNAに忠実な鬼才
映画『マグニフィセント・セブン』はいかにして現代に蘇ったのか。
アントワーン・フークア監督の独自の流儀とその美学に迫る。
text nick scott photography piers cunliffe

 アントワーン・フークア監督は、常に空気感を大切にしている。自身の作品で最も有名な『トレーニング デイ』(2001年公開、デンゼル・ワシントンとイーサン・ホークが出演)で張り詰めた緊張感や粗削りな趣が感じられるのは、50歳にして兵器級の手腕を持つ彼のおかげだ。陰謀がらみのアクションスリラー『ザ・シューター/極大射程』(2007年)では、ハラハラするような空気が感じられるし、自身の持つボクサーとしての経験を生かして製作された前作『サウスポー』(2015年)でも、主演のジェイク・ギレンホールの目力に引けをとらない緊迫感が全編に漂っていた。
 だから今回のインタビューでも、撮影時のBGMを流すためのステレオが確保できなかったとき、彼は何をすべきかを心得ていた。自分のスマートフォンを片手にテラスに出ると、バルセロナのビーチを見渡しながらプレイリストを検索しはじめる。そしてすぐさまキューバのサルサを選曲し、ソファにもたれてポーズを取ってくれた。
 フークアはこのところ、実にエキサイティングな仕事をこなしていた。最新作―― 黒澤明の不朽の名作『七人の侍』(1954年)と、そのリメイク作品の『荒野の七人』(1960年)を再リメイクした『マグニフィセント・セブン』(1月27日公開)――において、さまざまなジャンルで重厚な男のドラマを描いてきた彼が初めて西部劇に挑戦したのだ。本作では、旧知のデンゼル・ワシントンやイーサン・ホークを再び起用するだけでなく、韓国のスターであるイ・ビョンホンやメキシコの俳優マヌエル・ガルシア・ルルフォ、ネイティブアメリカンのマーティン・センズメアーといった、多彩なキャスティングを実現している。「実力派たちがすばらしいキャラクターを演じる西部劇なんだから、思い切って挑戦するしかないだろう?」とフークアは奮い立つ。
 さらに、誰の胸にも響くであろう劇中の音楽を手がけたのは、フークアの旧友であるジェームズ・ホーナーである。彼は死の直前に作曲を手がけ、これが遺作となった。こんな豪華な作品なのだから、オリジナルの『荒野の七人』はもちろん、そのもとになった『七人の侍』のファンもきっと納得するに違いない。

クロサワ作品を完璧にリメイクするなんて到底無理だ

 クロサワは映画界のシェイクスピアだからね。オリジナルを超えようとするんじゃなく、リスペクトを込めた自分なりの作品をつくろうとしたよ。

名作をリメイクするからには責任を持ちたい

 『荒野の七人』も『七人の侍』も人気の古典映画だけど、そのDNAは今でも多くの人々の共感を呼んでいる。世界には今も暴政に苦しむ人々がいて、悪者と戦う弱者がいる。基本的なコンセプトである自己犠牲の精神、助けを必要とする他者のために我が身を危険にさらすという生き方は、いつの時代になっても語る価値のあるストーリーだ。

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Antoine Fuqua
アントワーン・フークア
1966年ペンシルベニア生まれ。CMやPVの監督を経て1998年に『リプレイスメント・キラー』で映画監督デビュー。2001年の『トレーニング デイ』ではデンゼル・ワシントンにアカデミー主演男優賞をもたらす。独特の空気感と骨太な演出で熱き男のドラマを描いて高評価を得ている。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 14
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