Friday, August 18th, 2017

Charged Affairs

外交官ハレンチ物語
外交官の仕事は謎に包まれており、インモラルな駆け引きに満ちていたようだ。
そしてその私生活も、これまた大いに奔放なのである。
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世界一のプレイボーイ

 世界を股にかけた外交官の艶聞を語るなら、ドミニカの外交官ポルフィリオ・ルビロサに触れないわけにはいかない。親しい友人たちから「ルビ」という愛称で呼ばれた彼は、戦後のジェットセッターの中でもひときわ目立つ存在だった。彼は、カリブの小国を牛耳る独裁者のために働き、独裁者の美しい娘は17歳でルビと出会って最初の妻になった。
 身長は177センチ程度で、見るからに中産階級の出身にもかかわらず、世界一裕福な女相続人から王妃、伯爵夫人、そしてエヴァ・ガードナーやジェーン・マンスフィールド、エヴァ・ペロンといった名だたる美女まで、合計すれば4桁はいこうかという女性たちが、競って彼に抱かれたのはなぜだろうか?
 彼は生まれつき裕福というわけではなかった。ナチスの迫害から逃れるユダヤ人に、ドミニカのビザを売って金儲けをしようとしたこともあれば、宝石商から委託された18万ドル相当の宝石を紛失し、スナイパーに奪われたという眉唾ものの言い訳をしたこともある。では、ルビにはどんな魅力があったのだろうか?
 そのヒントは、彼に付けられたニックネーム、「Toujours Pret(=いつでも臨戦態勢)」にある。またパリのとあるレストランでは、スタッフや常連客が巨大なペッパーミルを「ルビロサ」と呼んでいた。これは、伝説のプレイボーイが胡椒を好んでいたからではない。
 トルーマン・カポーティは『叶えられた祈り』という未完の小説で、ルビの剛刀を「長さ11インチもあるカフェオレ色の重りのようで、男性の手首ほどの太さがある」と描写した。どうやって知ったのかはわからないが。
 一物で壁のしっくいを剥がすことができたという伝説や、無敵のヒット率を誇る一方で、ルビのライフスタイルもまた華やかだった。
 ハロルド・ロビンスの大衆小説『冒険に賭ける男』に登場するロマンティックなヒーローのモデルになったといわれるルビは、ポロを楽しみ、B-25爆撃機を操縦し、フェラーリでル・マンに出走した。
 冒険心に満ちた彼は1952年夏、ドミニカ共和国の沖合に財宝が沈んでいるという噂を聞きつけて、急ごしらえの探検隊を結成。だがメンバーの多くは、到着から1週間もたたないうちに飲酒行為で逮捕されてしまったため、お宝の探索には至らず、嵐に遭って船体に25万ドル相当の被害を受けただけで終わった。

彼がモテた秘密は?

 しかし女性たちを魅了したのは、冒険小説を地で行くような勇敢さより、彼の“ひたむきな優しさ”だったのだろう。事情通のコラムニスト、タキ・テオドラコプロスによれば、ルビはお酒が入るとギターを奏でながら「俺はしがないジゴロ」と歌ったらしいが、彼は本物の紳士でもあった。
 外務省でルビの同僚だった夫を持つミルドレッド・リカールはこう回想している。
「相手が80歳であれ4歳であれ、誰かと話しているときは、絶世の美女が入ってきても目もくれなかったわ。彼と一緒にいる女性は、自分がこの世で一番大事にされていると感じるの。ベッドですばらしいい男性はたくさんいるけど、一緒にディナーには行けないでしょ」
 つまり、彼には“’je ne sais quoi”(言葉では言い表せない魅力)があったのである。そのおかげで、彼は何度も女性に救われ、金銭トラブルを切り抜けることができた。
 ルビロサは56歳でこの世を去った。お気に入りのたまり場だったロンシャン競馬場とバガテル・ポロクラブの目と鼻の先で、ブローニュの森を通るレーヌ・マルグリット通りで、猛スピードのフェラーリを縁石にぶつけ、木に激突したのである。大変な悲劇ではあるが、ルビの生き様にふさわしい死に方ではなかろうか。
 ルビの人生を彩ったような情事が、いまでも人目を忍び、スキャンダルに溺れる外交畑の面々によって、世界中で繰り広げられていることだろう。

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ヴィク・オリバーとマーガレット・ミッチェル、マーゴット・アンダーソン(マンチェスターのパレス・シアターにて、1951年)

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上:ロサンゼルスのモカンボ・ナイトクラブでザ・ザ・ガボールを魅了するポルフィリオ・ルビロサ(1954年)下:パリで行われた結婚披露宴で無関心なバーバラ・ハットンの手にキスをするルビロサ(1953年)。ふたりの結婚は53日しか持たなかった。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 17
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