August 2018

A FLOATING PARADISE

成功者のみが手にできる水上の楽園

イタリアのラグジュアリーボートメーカー、リーヴァの進化を象徴するモデル、「リヴァマーレ」はまさに史上最高に洗練されたプレジャーボートだ。
text nick scott
photography piers cunliffe

世界中の王族や銀幕スターに愛されてきたリーヴァの名ボートのDNAを受け継いで2016 年に新たに誕生した「リヴァマーレ」。全長は39フィート(約12メートル)。エンジンはVOLVO PENTA D6 400。最高速度は40ノット(時速約74キロメートル)。日本で購入の場合の納期は約8カ月~。価格は980,000ユーロ~。Riva

 フェレッティ・グループのCEO兼ディレクター、アルベルト・ガラッシは、あるとき、イタリア現代アーティストのミンモ・ロテッラに呼ばれ、「人生でもアートでも、人がやらないことをやらなきゃいけない」というアドバイスをもらったらしい。ガラッシはサルニコにあるリーヴァのボートヤードの上のオフィスで、イセオ湖を眺めながらこう語った。

「ルーチョ・フォンタナの空間主義、パブロ・ピカソやアリギエロ・ボエッティの作品を考えてみてください。彼らはみな、人がやらないことをやったのです」

 マンチェスター・シティFCの理事や航空機メーカーのCEOも務めていたガラッシは、1974年に父親がリーヴァの船を購入したときに、その魅力に取り付かれた。彼は2014年にリーヴァを傘下に持つフェレッティ・グループのトップに就任したが、そのときからロテッラの至言を座右の銘にしてきた。リーヴァのプレジャーボート「リヴァマーレ」は、人がやらないことを追求するという彼のポリシーを何よりも明確に表現している。

富を象徴するステイタスシンボル リーヴァの歴史が幕を開けたのは1842年。場所はイタリア北西部、ロンバルディア州の緑豊かな山々のふもとに細長く延びたイセオ湖のほとりである。突然の大嵐の襲来で地元の漁船の多くが損傷してしまったところに、若い大工だったピエトロ・リーヴァが修理するための造船所を造ったのが始まりだ。しかし、ボートレースに情熱を注ぐ孫のセラフィーノ・リーヴァが経営を受け継いだ1930年代には、同社は小型のレーシングボートやプレジャーボートのメーカーに成長していた。そして1952年、セラフィーノの息子カルロ・リーヴァが画期的な造船手法の導入を決定。これが現在のリーヴァの礎となる。カルロは、ウッドに熱い蒸気をあてて防水パネルを作るという斬新な技法を取り入れて、それまでよりはるかに丈夫で、美観に優れた木製のハル(船体)を開発したのである。

イタリア北西部のイセオ湖畔にある、リーヴァのボートヤード内にて。「63’ Virtus」というモデルの造船風景。

本記事は2018年7月24日発売号にて掲載されたものです。
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THE RAKE JAPAN EDITION issue 23

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