July 2015

EMPIRE OF THE SONS

地球上で最も裕福な一族
―ロスチャイルド家の系譜―

19世紀初頭、ドイツ系ユダヤ人の銀行家が5人の息子をヨーロッパ各地の金融の中心地に送り込み、家業を展開したときからすべては始まった。それから7世代目の今も、ロスチャイルド家は地球上でもっとも裕福かつ有力な一族だ。この一族をめぐる金、ダイヤモンド、戦争、ワイン、そして信仰と家族の物語をひもとく。
text james medd
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フランスにあるシャトー・ムートン・ロートシルトの航空写真。 この超一流シャトーを所有するのも、ロスチャイルド一族の分家だ。

もし私がお金持ちだったら “ロスチャイルド”という名には、大君の器を思わせる響きがある。莫大な富を何代にもわたって受け継いでいく一族は、いくつか知られている。アメリカのロックフェラー家やゲッティ家がよい例だ。(ビル・ゲイツも近いうちに仲間入りするだろう)。

 だが、銀行家のロスチャイルド一族ほど世界中に進出し、途方もない成功を収めた存在はない。

 この一族をモチーフにした『もし私がお金持ちだったら』という歌は、いまや世界中にて広く知られている。これは『屋根の上のバイオリン弾き』というミュージカルの挿入歌だが、原作者ショーレム・アレイヘムの「もし私がロスチャイルド一族だったら」という独白からヒントを得ている。

 このユダヤ人作家が執筆活動をしていたのは19世紀末だが、ロスチャイルド家は常に成功を収めてきたため、過去2世紀のどの時点でも、同じセリフが通用しただろう。

 アレイヘムが書いたストーリーの主人公は、ユダヤ教のしきたりや家族の絆を守ろうと奮闘する父親だが、これはまさにロスチャイルド家の物語でもある。

 彼らは家長の統制力のもとで繁栄し、他の一族が衰退しても、血族結婚や信仰によって富を維持してきた。そのおかげでロスチャイルド一族は大胆で頭の切れるビジネスブレーンを代々輩出し、団結心や共通の価値観を武器に、世界有数の大富豪としての地位を築いてきた。

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フランス生まれのイギリスの政治家ジェームズ・アルマン・ド・ロスチャイルドはワデスドン・マナーをナショナルトラストに遺贈した。

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ナサニエル・ロバート・ド・ロスチャイルドと花嫁のニリ・リモン、両家の両親(1975年撮影)。

THE RAKE JAPAN EDITION issue 03
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