Sunday, April 22nd, 2018

100 YEARS : THE SONG WE’LL ONLY HEAR IF WE CARE
ファレル・ウィリアムスの新曲、
100年後にリリース

ファレル・ウィリアムスの新曲とあれば、世界中の誰もが聴いてみたいと思うだろう。
彼が今回書き下ろした曲は、最高級コニャック「ルイ13世」と手を組んで誕生したもの。
聴けるのはなんと100年後になるという。しかも、とある条件を満たした場合に限って。

 2017年11月、新曲は上海での限定公開イベントで初めて披露された。レコードに針が落ちたのは一度きり。今世紀にこの曲が聴かれるのは最初で最後となった。そのアーティストこそ、今や全世界を虜にする男、ファレル・ウィリアムスだ。「飛ぶ鳥を落とす勢い」とはまさに彼のためにある言葉といっても過言ではない。新曲が通常の手順を踏んでリリースされれば、ラジオでパワープレイされ、ヒットチャートを駆け上がり、ミュージックビデオはYouTubeで何億回と再生されるだろう。レコード会社が莫大な収益を得るのは間違いない。
 しかし彼が今回、フランスの最高級コニャック「ルイ13世」と手を組んで書き下ろしたこの曲は、100年後の2117年まで聴くことができない。レコードは金庫に保管され、「ルイ13世」とともに100年間の“熟成の時間”を過ごすのだ。そう、これは「ルイ13世」の「100YEARS」プロジェクトの第2弾である。2015年に発表された第1弾は、ハリウッドスターで映画監督であるジョン・マルコヴィッチが100年後まで公開されない映画を制作したことで話題となった。その第2弾は、100年後まで聴くことのできない音楽、というわけだ。

100年後まで日の目を見ない芸術

「ルイ13世」は、コニャックという領域を超えた、ある種芸術作品とも呼べるものである。約1200種類もの“オー・ド・ヴィー(原酒)”を、数世代のセラーマスターが複雑にブレンドを重ね、100年という長い時間をかけて完成させる。彼らはもちろん、完成した「作品」を手にすることはできない。「自然」の豊かな実りと、100年という「時間」によって生み出される味わいは、単純な言葉で表現されるようなものではなく、体験しなければわからないものなのだ。
 この美学に共鳴して発表されたのが「100YEARS」プロジェクトだが、ファレルが「ルイ13世」と手を組んだのには、ある重要なメッセージを世界に発信するというもうひとつの目的があった。その秘密は、『100 Years:The Song We’ll Only Hear If We Care』という曲名に隠されている。ファレルは次のように語る。
「書き下ろしたオリジナルソングは『自然』と『時間』、それに人間が環境に及ぼす影響の微妙な関係を歌ったもの。この歌は気候変動がもたらす結末に人々が対処して地球環境を救うための行動を呼びかけるためのものなんだ」
「ルイ13世」の生産は「自然」と「時間」に左右されている。気候が変動すれば最高のオー・ド・ヴィーは生まれないし、地球温暖化が進めばやがて海面は上昇し、コニャック地方も水没してしまう。セラーマスターによる一世一代のこの偉業を継承するには、なんとしても食い止めなければならない。実際、「ルイ13世」を有するレミーコアントローグループは、かねてから国連グローバル・コンパクトのメンバーになっている。CO₂排出についてもあらゆる努力を惜しみなく注いでおり、「ルイ13世」の生産過程においては極めて少量にとどめているという。
「次世代のためにこの世界を守る必要がある」。ファレルもまた、環境問題の論客として知られる元米副大統領アル・ゴア氏とともにコンサートを企画するなど、地球温暖化へ歯止めをかけるための活動に力を注いできた。だから今回の両者によるプロジェクトに環境問題への想いが込められたのは必然だった。
 その想いはユニークに結実している。録音されたレコードは、コニャック地方の石灰質土壌の粘土で作られており、水がかかると溶けてしまう。また、内蔵タイマーによって2117年11月に自動的に開錠する仕組みを備えた最新鋭の金庫はあえて耐水性にしていないため、コニャック地方まで水面が上昇した場合、機能が破壊されてしまう。つまり、今後100年間にわたり、ひとりひとりが地球環境に対して関心をもって行動しなければ(#IfWeCare)、この曲を100年後に生きる人々に残すことができないのだ。プロジェクトが呼びかけるのは人々が具体的に何をすべきか、ではない。個々が考え行動することの重要性を声高に叫んでいるのである。

Pharrell Williams
ファレル・ウィリアムス
1973年アメリカ・バージニア州生まれ。90年代よりザ・ネプチューンズのメンバーとして音楽プロデュースに携わり、2002年にN.E.R.Dのメンバーとしてデビュー。2013年のソロシングル『HAPPY』と翌年のセカンドソロアルバムが全世界で大ヒット。独創的なファッションにも注目が集まる。昨年末にはN.E.R.Dの7年ぶりのニュー・アルバムも発売。

100年後を見据えて創られる
最高級コニャック「ルイ13世」

THE RAKE JAPAN EDITION issue 20

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