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ジェイエムウエストンは
私の初恋だった靴

My First Love Shoes, J.M. WESTON

Friday, December 7th, 2018

 さて、そんなジェイエムウエストン青山店には、かつて名物店長Y氏がいた。ジェイエムウエストンへの愛は誰にも負けないと胸を張っていた。靴の話をすると止まらなくなる人だった。

 

「こんなに儲からない商売はないですよ。ウチの靴は4ミリピッチでサイズが揃えてある。しかもモノによっては、それぞれのサイズごとに最大7つもウィズがある。それらを保管するだけでも膨大な場所が必要なんです。これを最初に上司に話したら、『1軒の靴屋に、なぜそんなに大きな倉庫が必要なんだ』と言われました。しかし、どうしても“本物”を持って来たかった・・」と25年前に話されていたのを覚えている。

 

 当時の日本の百貨店の常識では、靴のバリエーションとストックヤードの広さが、どうしても釣り合わなかったのだ。Y氏の情熱が、渋る上司を説得し、日本初の本格輸入靴店を実現させた。

 

 「こんなにお得な靴はないですよ」という、Y氏の言葉が耳にこびりついている。

 

 事実今でも、ジェイエムウエストンはリーズナブルな靴屋だと思う。25年前と比べると、高級ブランド靴の値段は、びっくりするほど高くなった。2倍、3倍は当たり前である。それは主に革の値段と人件費が上がったから、ということらしいが、その点ジェイエムウエストンは良心的だ。夢にまで見ただけに、私は当時の値段をはっきりと覚えているが、値上げ幅は抑えられていると思う。

 

 

 

ジェイエムウエストンの工房にて。ソールレザーは自社で鞣したもの。©Vincent Leroux

 

 

 ひとつには、自前のタンナーを持っているということが効いているのだろう。ジェイエムウエストンの本拠地、リモージュ近郊には、底革のなめし工場がある。そこでは、数百年前と変わらないベジタブル・タンニンの製法が守り続けられている。高級ブランドで、こういった施設を持っているのは、ジェイエムウエストンのみである。現在、本当に良質な底革を供給できるのは、英ベイカー、独レンデンバッハなど、世界でも数社になってしまった。当然値段は高騰し、ブランド間で奪い合いになっているという。

 

 

新しく、丸の内・二重橋スクエアにオープンしたジェイエムウエストンの旗艦店。

 

 

 そんなジェイエムウエストンのニューストアが、去る11月8日、丸の内・二重橋スクエアにオープンした。都内では、実に四半世紀ぶりの路面店だ。2018年7月にオープンした、世界最大規模を誇る新しいシャンゼリゼ店のコンセプトを受け継ぐアジアでは初のコンセプト・ショップだという。

 

 丸の内仲通りに面し、そばには、ジョン ロブやオールデンの専門店も軒を連ねる。靴ファンには、嬉しいエリアの誕生だ。

 

 

奇を衒わず、落ち着いた印象の店内。フランスのブティックならではの意匠だ。

 

 

 ショップ・デザインは、ジョゼフ・ディランが担当した。ファッション・ブティックの内装を得意とする俊英だ。バルマンやバレンシアガ、ジバンシィなどのショップを手掛けたことで知られる。

 

 1930年代のアールデコからインスピレーションを得たという店内は、大理石とレザーが多用され、現代的な高級感に溢れている。注目したいのは、陳列棚やディスプレイ台に使われている美しいボワズリ(木工指物)で、こういった木工芸はフランスのブティックの伝統なのだ。いつまでも飽きが来ず、明るい色調に、ダークな靴が映える。

 

 

『ジェイエムウエストン 丸の内店』のオープンを記念して発売された、アリゲーター製のストレートチップ。¥620,000  J.M. WESTON

 

 

 『ジェイエムウエストン 丸の内店』のオープンを記念し、アリゲーターレザーで仕上げた「300:ストレートチップシューズ」も限定発売された。マットな光沢のアリゲーター素材を、ごくオーソドックスなシルエットに落とし込んである。エキゾチックレザーは、主張が強くなりがちだが、これはごく端正にまとまっており、新たな定番になりそうな気がする。

 

 店内では簡単なリペアやポリッシングが受けられるほか、スペシャルオーダーも随時受け付けている。150種類のレザーから組み合わせを選ぶことが出来、ステッチやライニングのカラーなども選ぶことができる。

 

 ジェイエムウエストンは、昔からこの手のサービスに力を入れており、自分だけの一足を手に入れることができる。アッパーの各パーツを違う色で拵えると面白い。

 

 私も、フルグローグのトリプルソールダービーを、濃茶のグレインドレザーでオーダーしたことがある。そのときは、インナーをピンクにしてみた。脱ぐ度に驚かれるので、靴を脱ぐ機会の多い日本人にはおすすめのカスタムである。

 

 価格がレディメイドとそんなに変わらないのも嬉しい。もともとすべての靴が一点ものに近いからこそ出来るサービスなのだ。

 

 こうやって、ひとつひとつ検証していくと、ジェイエムウエストンのサービスは、初上陸から25年経ったいまも、業界をリードするものであることがわかる。

 

 私の現実の初恋の人は、今ではすっかりオバサンになってしまっただろうが、ジェイエムウエストンは、いつまでも色褪せないパリジェンヌそのものだ。

 

 

 

ジェイエムウエストン 丸の内店

東京都千代田区丸の内3-2-3 二重橋スクエア 1F

www.jmweston.com/jp/

 

 

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