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“魔性のエンジン”を
味わい尽くすために

BMW M2 Coupé

Monday, June 5th, 2017

text kentaro matsuo

 

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アグレッシブなエクステリア・デザイン。BMWのデザインは、「美しく、しかも退屈しない」という理想的なフェーズを迎えている。

 

 

 “バイエルンの青い空”とは、数多いBMWへの賞賛の一つだが、その言葉に相応しい、どこまでも「スコーンと抜けた」一台が、今回試乗したBMW M2 Coupéである。 BMWの本格スポーツカーとして、会心の作であるのは間違いない。

 

 まず嬉しいのは、そのサイズだ。昨今スポーツカーのサイズがどんどん拡大されているなかで、全長4475mmは、コンパクトカーの範疇だ。全幅は1855mまで拡大されているが、それでも、スポーツカーらしい“タイト感”に溢れている。乗った瞬間から、体にフィットしたオーダースーツを着たような心地よさがある。

 

 エクステリアは、迫力のあるフロントエプロンや張り出したフェンダーで、迫力満点。このクルマが、只者でないことをアピールしている。ノーマルの2シリーズとは、似て非なるものである。

 

 

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大きく張り出したリアフェンダーが、このクルマがピュアスポーツカーであることを物語っている。

 

 

 BMWのエクステリア・デザインは、いま最盛期を迎えていると思う。かつて超アヴァンギャルドなデザイナー、クリス・バングルがチーフを務めていた時期のBMWは、すべてにおいて“トゥーマッチ”であった。しかし、天才バングルの残した遺産の数々は、ほどよい形で咀嚼、継承され、現在のBMWのデザインは、「美しく、しかも退屈ではない」という理想的なフェーズを迎えている。

 

 対してインテリアは、やや素っ気ないもの。カーボン製のパーツが多用されており、パーツの質感も高いが、すべてがブラックアウトされており、第一印象としては、少し地味だと感じる。

 

 

 

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すべてがブラックアウトされたインテリア。カーボンパーツが多用され、レーシーな雰囲気だ。

 

 

 スタートキーを押すと、猛々しいエグゾーストノートが響き渡る。一瞬にしてこのクルマが、天下一品のエンジンを積んでいることがわかる。それもそのはず、BMW M2 Coupéの心臓は、かつて一世を風靡した“ストレート・シックス=直列6気筒”なのだ。

 

 昔はBMWのスポーツモデルといえば、直列6気筒が花形だった。“直6=チョクロク”は、ピストン・バランスに優れ、スポーツカーのエンジンとしては理想的なのだ。しかしレイアウト的な制約が多く、効率重視の現代では、もはや絶滅危惧種となっている。

 しかしBMWは、かつての看板エンジンであった直6を諦めず、コツコツと、じっくりと熟成させてきた。そして出来上がった最新の直6エンジンは、もう芸術品ともいえるレベルに達している。

 

 

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BMW自慢のインラインシックス(直列6気筒)エンジン。素晴らしいパワーとスムムースネスを誇る。

 

 

 最高出力370ps、最大トルク465Nm、0-100km/h=4.3秒のスペックからわかる通り、このクルマは死ぬほど速い。フルスロットルでアクセルを踏み込むと、全身の血液が背中から抜けて行くような加速感を味わえる。

 

 しかしこのクルマと、このエンジンのコワいところは、スペックを超えた官能性にこそある。その回り方は、同じ6気筒でも、V6の「ロロロン」とも、水平対向の「シャーン」とも違う、「ヴォーン!」といった男々しいものだ。そして高回転になると、それが「シュパーン!」に変わる。とにかくなめらか。BMWの直6を表現する言葉“シルキーシックス”とは、言い得て妙である。

 

 7速 M DCT Drivelogic(ダブル・クラッチ・トランスミッション)は、極めて素早いシフト・チェンジを可能にしている。普段はDモードに入れっぱなしでも、気持ちのいいシフトアップ&ダウンをしてくれるが、やはりここは、ハンドル裏のパドルを駆使し、マニュアルモードにて、エンジンの魅力を味わい尽くしたい。

 

 高速道路やワィンディングなどで、このエンジンを4千回転以上で回して走っていると、ドライバーは恐るべき快感にとらわれてしまう。エグゾーストノートの“鳴り”のよさと、全身で感じるトルク感のせいで、さらにアクセルペダルを踏み込みたくなってしまうのだ。スピードメーターを見ると、踏むべきはブレーキだとわかっているのだが、どうしても回したくなる。この誘惑に勝つのは、相当な理性がないと難しい。

 

 ここまで官能的なエンジンは、他にはV12系くらいしか思い浮かばない、しかしアチラは、数千万円の世界である。対してBMW M2 Coupéは、800万円ほど。コンパクトカーとしては確かに高いが、当代随一の“魔性のエンジン”が手に入るのだから、安い買い物だとも言える。

 

 濃密なドライビングを終えてガレージに戻り、ふと我に返ると、さっきまではやや素っ気ないと思えていたインテリアも、「これでいいのだ」と思えてくる。すべてをブラックアウトしたのは、一重にドライビングに集中させるため。このクルマはすべてが、ドライバーの官能のためにあるのだ。

 

 

 

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BMW M2 Coupé

BMWの本格スポーツMモデルの末弟。コンパクトなサイズに「伝家の宝刀」直6エンジンを積む。全長×全幅×全高:4475×1855×1410mm、エンジン:3ℓ直列6気筒DOHCターボ、最高出力:370ps/6500rpn、最大トルク:465Nm/1400-5560rpm、後輪駆動 ¥7,930,000 BMW

 

 

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